教育方針は先代の頃から変わっていないが、社員には久保社長ならではの哲学を伝えている。それは、「自分たちが自分たちの会社を創ってゆく」という考え方だ。先代の社長は創業者だったこともあり、社長を筆頭に営業成績を上げることを目標としていた。しかし、久保社長は代表交代にあたって、先代のやり方を参考に自分の能力に応じたやり方をしないといけないと確信。つまり「社員一人ひとりが企業の担い手だという自覚をもって、積極的に運営に関わる」ことを掲げた。
昨年度はさっそくその成果が業績に現れ、第42期第2四半期連結累計期間の売上高は36億3,454万円、前年同四半期に比べ14.3%の増益となった。第3四半期の売上高は57億4,600万円。13年4月期の売上高は72億1,700万円と予想されているが、上方修正は確実であろう(表)。これで5期連続の黒字だ。
この主要因を、久保社長は「企業理念が各拠点長の意識に浸透し、それぞれが自立心をもって能力を発揮し始めた賜物」だと見ている。売上第一で走り続けていた頃は、どこか社員間の統一がとれず、業績の伸びは拠点長の力量如何によって、大きく左右されてきた。しかし、勝ち負けより相手との関係性を持続させるために誠意をもって対応することに重きを置くと決め、「会社は社員のもの」という理念を社員に伝えていった。その結果、今年は各拠点長の意識に自立心が芽生え、個人の力量ではなく、企業の構造的な部分で業績が伸び始めた。だが今のところ、実力を発揮しているのは2~3割だ。各々が何かに"気づき"、それを実践しなければ成果は出ない。のび代の社員が気づくまで長い目をもって見守らねばならないが、それは想定内のことだ。
長い目で確実に社員が成長していく様を見守る久保社長は、社員の職場環境に「緑」を取り入れることにも心を砕いている。昨年、同社が佐賀県鳥栖市に設立した物流センター「グリーンクロスロジスティクス」には、1,500m2ほどの芝生が併設されている。「良い仕事は良い環境の下で育まれますからね。これから首都圏にもつくりたいですが、土地代が高いので厳しそう」と久保社長。理想を追求すれば、現実の壁が行く手を遮る。時には迷いも悩みも生じるが、そんなとき、支えになるのは仕事に対する信頼だ。提供する商品は人の幸せに役立つものだという自信、業績を上げれば、それだけ地域に納税と雇用で貢献できるという確信。全国各地に広がる同社グループが、1つの理念のもとしっかりと結びつき合う未来図は頼もしい。人、そして社会環境に貢献しているという誇りが、同社をしっかりと支えている。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:久保 孝二
所在地:福岡市中央区小笹5- 22-34
設 立:1971年7月
資本金:6億9,726万円
<プロフィール>
久保 孝二(くぼ・こうじ)
1971年2月生まれ。98年7月に同社入社後、2000年8月に久留米支店長代理、02年5月に久留米支店長、04年5月に営業開発部次長、05年5月に執行役員営業開発部長、08年7月に取締役営業開発部長を歴任後、11年4月に代表取締役社長に就任。現在に至る。
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