問題点をクリアしないままの原発再稼働や海外への原発輸出は、国民にとって大きなリスクをはらんでいる。安倍政権は成長戦略のエネルギー分野において、新エネルギーを模索しつつも3.11がなかったかのような原発推進に転換。原発再稼働の方向で動いている。しかし、本当に「安全」だと言い切れるのか。
脱原発からの再生可能な自然エネルギーへのシフトを訴え続ける環境エネルギー政策研究所の所長の飯田哲也氏に、エネルギー政策の問題点を聞いた。
<原発輸出のリスク>
12日、安倍政権の成長戦略最終案が明らかにされた。素案の時点から盛り込まれていた原発再稼働が、改めて鮮明に打ち出されたかたちだ。安倍首相は、UAE(アラブ首長国連邦)、トルコ、インドなどに外遊し、原発輸出をトップセールスを行なっている。しかし、金融緩和による円高・デフレ脱却に向け、順調に進んでいるかに見えたアベノミクスの過熱感は、いったん冷却。放った3本の矢は、うまく的を射るのかどうか――。
経済政策に関しては長期的に行く末を見守る必要があるが、安倍政権の打ち出すエネルギー政策に関しては、危うい面がちらほらと見え隠れしている。
脱原発からの自然エネルギーへのシフトを訴え続ける飯田氏は、「原発輸出は、成長戦略と言いながら成長阻害にしかならない。3.11の福島第一原発事故に何も学んでいない。事故の原因もまだはっきりとはわかっていないままに輸出しようとしている。本質的欠陥を抱えたまま輸出しようとしているのは、あまりにも乱暴なやり方」と、『安全』を売り文句にした原発輸出の危うさを口にした。
<3つの危険性>
原発輸出のリスクは、3層構造になっていると飯田氏は説明する。
まず第1に、自らが起こした福島原発事故が収束していないうえに事故原因も未解明なのに、それを他国に輸出して他国民に危険を押しつけようとする非倫理的な姿勢がある。
「最近、カリフォルニアのサンオノフレ原発で、三菱重工の蒸気発生器が2年でボロボロになって2基の廃炉が決定されるということが起きている。日本の原発技術は『世界一安全』と言うが、そうした実態を見ると本当にそうなのか疑問」と飯田氏は言う。
第2に、核拡散の恐れを大きくするうえに、輸出相手国の周辺に核をめぐる緊張を高めかねないという心配がある。サウジアラビアやUAE、ヨルダン、トルコ(しかも地震が多い国でもある)など中東周辺諸国への原発輸出は、中東情勢の緊張感を高める要因となりかねない。なかでも、NPT(核拡散防止条約)に入っていないインドへの輸出は、核拡散防止の国内外の努力を踏みにじるものだ。
第3に、純経済的に見ても、原発輸出は儲かったり経済成長につながるどころか、大きな損失を引き起こす恐れが高いという点だ。例えばインドは、原発で事故が起こった場合に、輸出企業に損害賠償を求める法律を持っている。そのため仮に事故が発生した場合、輸出企業に賠償金が請求されるのはもちろん、2国間協定の内容次第では輸出を取り付けた日本政府にも損害賠償が求められ、それが国民の税金に跳ね返ってくる可能性もある。
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