石原伸晃環境大臣が水俣病と福島第一原発事故の被害者への対応で、感想を求められた際に「個別案件についてはお答えできない」と述べ、事実上拒否したことが複数の関係者の話でわかった。発言があったのは、6月6日。全国の公害被害者が共同して、政府や公害発生企業に対し被害者救済などを求める「全国公害被害者総行動」の一環で開催された交渉の席上。
石原環境相は当初、国会日程の関係で出席未定だったが、田中和徳副大臣とともに出席。大臣・副大臣両名が同席するという、公害総行動での交渉では破格の扱いとなった。
交渉では、答弁は田中副大臣が行ない、石原環境相はあいさつのみ。最後に「せっかく大臣がお越しになられていますので、原発と水俣病の被害について、石原大臣から感想を一言お願いします」と向けられて、「個別案件についてはお答えできない」と述べたもの。
公害行政の主務大臣として、答弁は副大臣任せにしたうえ、被害者の肉声を聞きながら「個別案件」を理由に感想を拒否する態度に接して、水俣病被害者らから「この人に環境行政は任せられない」、「怒りを通り越して情けない」と批判の声が挙がっている。
要請事項に対する答弁は官僚が作文するとしても、いやしくも大臣たる者が、しかも水俣病に対する公害行政のトップである者が、被害に遭った当事者に対し、その被害についての感想さえ述べられないのでは、政治家失格と言われても仕方がない。ちなみに、同大臣の父親で、日本維新の会共同代表の石原慎太郎氏も環境庁長官を経験しているが、同氏も環境庁長官時代、水俣病をめぐって「にせ患者もいる」などと発言し、胎児性水俣病患者に土下座した。親子2代にわたって、公害行政を担う資格がないというのも日本の政治の貧困を象徴する出来事だが、救われないのは被害者である。
それにしても、政権政党に返り咲いた自民党の"劣化"は恐ろしい。高市早苗政調会長の"原発事故死亡者は出ていない"発言といい、石原環境相の"感想拒否"といい、政権政党幹部としての自覚を疑われる。「アベノミクス」に浮かれるのはいいが、今や「アホノミクス」と週刊誌で揶揄される状態である。国民に対する責任というものを、どう考えて行動しているのだろうか。もっとも、権力者をしばる基本法(憲法)を、国民をしばる憲法に変えようと、憲法改正の旗を振っているのが安倍晋三総理・総裁だから、この党にとっては、国民とは「義務を果たせ」と求める対象であって、国民への責任を果たすという発想はないのかもしれない。
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