福岡市中央区にある中央保育園の現行の移転計画に反対する保育士や在園児・卒園児の保護者らが、高島宗一郎福岡市長に面談を要望している件で、高島市長は極めて消極的な姿勢を示した。移転候補地の選定プロセスについては市側から納得できる説明もなされていない。
<不透明さを増すプロセス>
25日の福岡市議会で、民主党市政クラブの田中しんすけ市議は、問題とされる移転候補地について、「会派として、審議において十分なチェック機能を果たせず、率直に反省」と襟を正した上で、移転候補地選定の経緯、市議会や保護者に対する説明などについて質問。所管のこども未来局・吉村展子局長は、計6カ所の土地から「耐震性に問題がある現施設から、在園児の安全性を確保するため、土地価格は考慮せず、早期取得の可能性を重視した」、「スピード感をもって事業を進めるため、『ここしかない』と決定した」などと答弁。事実上、選定プロセスを市議会に説明していないことを認めた。
疑問が次々と噴出している。中央保育園を定員300名という全国有数のマンモス園として移転する必要性については、「(市の)全域的な保育需要から判断した」などと答弁。また、在園児の住所について、保育園の近隣と遠方の割合が半分ずつとした。同保育園の保育士らは、「約8割が近隣」と主張しており、事実説明に食い違いがあり、"中央保育園だけを大幅に定員拡大する必要性"についてまったくもって理解できない。
また、田中市議は19日の定例記者会見において高島市長が、「マスコミで報道されたとか、声が大きいから、この人だけ飛び抜かして、私に直接会うというような場を設定することはフェアではない」との見方を示した保護者からの面談要望について、「(保護者らは)昨年から、課長・係長、市の説明会、部長・局長の面談を経ており、しっかり手順を踏んでいる」と擁護。「声を大きくしたのは誰か、十分な説明を行なっていない行政の怠慢」と糾弾した。
最後に、高島市長の自由な意見を求めようと、田中市議は自ら用意した原稿を手から放し、市長の所見を求めた。しかし、高島市長は、これまでと変わらず、「中央保育園の移転を着実に進めていく」、反対する保育士や保護者らについては、「担当局が話をうかがって、しっかり対応する」などと、面談要望に対して、極めて消極的ととれる内容の『用意された原稿』を読み上げた。かつて民放アナとしてテレビ画面の向こうの視聴者に語りかけていた高島市長だが、傍聴席で固唾を飲んで見守る保護者のほうに語りかけることはなかった。
移転問題への関心は市民の間でも高い。一連の高島市政の対応に、市民からは、「急な面談要望で、タレント(篠田麻里子さん)と会っても、市民とは会わないのか!」、「市長不在同然!」などと怒りの声が上がっている。
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