小倉記念病院の職員らが加入する労働組合が団交のために同病院を訪れた際、綜合警備保障株式会社(ALSOK、村井温代表)の警備員数名に取り囲まれ、団体交渉を拒否されたとして、労働組合が公安委員会に被害届を出したことがわかった。
被害届を出したのは、全国格差撤廃推進労働組合。延吉正清理事長・病院長による"粛清人事"に先立ち、解雇された島村秀一事務長らが加入している。島村氏らは「解雇は無効だ」として、地位確認を求めて提訴している。NET-IBでは、延吉氏らによる"粛清人事"については、連載(23)で詳しく報じたが、関係者によれば、それに先立ち、病院改革に立ち上がった島村事務長らを不当解雇の報復第1弾があったことになる。
東京都公安委員会、福岡県公安委員会に出された被害届などによると、同組合が延吉病院長、田中明病院長代行に対し、解雇撤回と復職を要求して、事前に団交を申し入れ指定の日に病院を訪れたところ、ALSOK警備員によって、6月12日、13日の2回にわたって、訪れた組合員らが取り囲まれ、申し入れ済みの団交を拒否された。
組合は、ALSOKの行為と言動に対し、「団体の正当な活動に干渉してはならない」と定められた警備業法第15条に違反すると指摘。組合らの権利、組合員の人権が著しく侵害されたとして、「営業停止命令等の厳罰」を望んでいる。
警備業法15条は、警備会社(警備員)に特別な権限がないことを定めている。警備業務は、依頼者の持つ権限の範囲内に過ぎず、「他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない」と定めている。15条が制定された背景の1つに、警備会社が会社の依頼を受けて警備と称して労働争議に不当介入した過去がある。
ALSOKといえば、オリンピック金メダリスト、レスリングの吉田沙保里選手のCMで有名な警備会社。1965年設立。設立直後から現金警護や銀行警備を始め、大阪万博の警備にも参加、近年では女性や高齢者、子ども向けサービスを展開し、着実に警備会社としてのブランドを高めていた。労働事件への干渉という、警備会社として古典的な禁止事項で被害届が出されたことは、痛恨の極みだ。
同組合の久保修一事務局長は、警備会社だけではなく、違法行為を行なわせた病院側の責任を追及している。「団交拒否は不当労働行為にあたるし、そもそも島村事務長らへの解雇理由は常識的に認められない。1日も早く話し合いのテーブルにつくべきだ。逃げ回っていても解決にはならない」と話す。今後、延吉院長、田中院長代行、病院側代理人の清原雅彦弁護士らに対し、「なるべく早い時期に団交に応じるよう、粘り強く申し入れていく」としている。
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