安倍首相のブレーンとして、産業競争力会議の委員を務める楽天・三木谷浩史社長。一般用医薬品(OTC)のネット販売解禁に尽力するなど、規制改革の旗振り役として注目を集める。しかし、三木谷氏に対する風当たりは強い。「我田引水」「自己中心」といった酷評もつきまとう。三木谷氏は規制改革の"旗手"か、それとも"政商"か。
<戻ってきた「彼らしさ」>
「ここ1~2年で『彼らしさ』が戻ってきたようだ」―三木谷氏をウォッチし続けてきたある人物は、こう話す。かつて、ライブドアの堀江貴文氏とともに、ITの申し子ともてはやされ、一躍時の人となった。だが、堀江氏は証券取引法違反容疑で逮捕。その後、三木谷氏も話題を提供することが少なくなっていったという。
ところが、2011年6月に楽天が日本経団連を脱退したあたりから、再び注目を集めるようになる。その1年後には、自ら率いる新たな経済団体「新経済連盟(新経連)」を設立。今年に入ってからは、アベノミクスを支えるブレーンとして活躍中だ。
直近では、夏の参院選で十数人の候補者を支援すると発表するなど、メディアへの露出も増えている。
ところで、「彼らしさ」とは何か。前述のウォッチャーは「ほかのベンチャー創業者と比べ、ケタ違いの行動力がある。そして、目標を立てたら、手段を選ばずに実現しようとする」と説明する。
その「彼らしさ」は、産業競争力会議を舞台とする成長戦略の議論でも健在だった。最後までもつれたOTCネット販売の解禁では、辞任をちらつかせて強行突破を図ろうとした。その結果、「原則解禁」という安倍首相の英断を勝ち取った。ここでも、目的を遂げるために、あらゆる手を使う三木谷氏の本領が発揮されたわけだ。
<「我田引水」の批判>
成長戦略で三木谷氏は、OTCネット販売解禁やネットの無料化などを主張。こうした言動に、マスコミ各社は敏感に反応した。
OTCネット販売解禁については、「我田引水だ」との批判が根強い。事実、ネット上でショッピングモールを運営する楽天にとって、ネット販売解禁は魅力的。同社にとっても事業拡大のチャンスだ。我田引水との指摘を否定できない面がある。当然のごとく、全国紙をはじめとする各メディアは、バッシングを繰り広げた。
また、ネットの無料化を目的とするネット・アウトバーン構想で、基幹網の国有化論をぶち上げた。これに対し、各方面から「規制改革と矛盾」との批判も。ご都合主義とも受け取れる一面を露呈した格好となった。さらに、民間主導の会議運営を要求するなど、政府内でも不評を買ったという。
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