耐震強度不足問題が発覚した久留米市のマンション住民が、同市に対し、固定資産税などの課税額の見直しを求めていることがわかった。同マンションは、新生住宅(株)=すでに廃業=が販売した15階建て分譲マンション(延床面積約8,160m2、92戸)。U&A設計事務所と木村建築研究所が共同設計(構造設計は、構造設計グループ森岡一博氏)し、元請・鹿島建設(株)、下請・(株)栗木工務店が施工した。
住民は、設計・施工の誤りのため耐震強度が大幅に不足しているとして、久留米市に安全検証を求めてきたが、結論が出ないまま約4カ月が経過。安全性と資産価値をどう評価して固定資産税・都市計画税が課税されたのか納得いかないとして、市の課税処分に対し異議を申し立てていた。楢原和則久留米市長は6月18日、「現時点において変更する根拠がない」として、異議申し立てを棄却している。
そのため、マンション管理組合(下川紗葵理事長)は同26日、楢原市長を相手取って、建物の安全性が確認されるまで、全世帯の建物の固定資産税の支払いの留保などを求める調停を福岡地裁久留米支部に申し立てた。
申し立てでは、久留米市の検証により安全性が証明されていれば、課税額が正当だと認めることができた一方、安全性が立証されなければ資産価値はないことになると指摘。市が早く結論を出していれば、課税額に反映されたはずなのに、市建築指導課の怠慢により、安全検証が課税額決定までに間に合わなかったと批判している。「自分たちが生活している建物が危険な状態である、一刻を争う状況」であるにもかかわらず、市が安全性の立証を一向に進めないので、毎日、不安とたたかいながら生活していると訴えている。
調停では、納税の留保が認められない場合は、その理由を明示するよう求めている。
住民の1人は、「固定資産税を支払わないと言っているのではない。私たちが依頼した専門家の検証で耐震強度が20%程度しかなく、退去、取り壊しせざるを得ないマンションになぜ資産価値があるのか。安全なら安全と言ってください。固定資産税の課税の何カ月も前から安全性の検証を求めてきたのに、いまだに検証結果が出ない。これでは、課税して税収だけは確保するために検証をわざと遅らせたと思われても仕方ない」と語った。
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