<強い経済、強い外交路線、一人勝ちを狙う自民党>
一方で都議選で圧勝した自民党は、7月の参院選でも同じように躍進すると見られている。例えば6月6日から7日にかけて自民党本部が行なった参院選についての世論調査だ。自民党の調査は、その精密さで定評がある。
この調査によると、東京選挙区(定数5)では、丸川珠代氏が19.1ポイント、武見敬三氏が11.3ポイントと、上位2名は自民党候補が占める。3位は公明党の山口那津夫氏で11.0ポイント。共産党の吉良よし子は7.8ポイントで4位につけている。
精密な調査は、自民党以外の党の状況もわかりやすく伝えている。民主党は鈴木寛氏が6.6ポイントで、大河原雅子氏が4.3ポイント。合計すれば共産党を抜いて4位に上がるが、いまのところ両者は一本化する見込みはない。
この調査後に桐島ローランド氏が出馬表明したみんなの党が6.2ポイントで、日本維新の会の小倉淳氏が4.5ポイント。数字だけ見れば5位は鈴木氏と桐島氏の争いになりそうだが、この調査後の6月11日に出馬表明した反原発のシンボル・山本太郎氏も見逃せない。山本氏は昨年末の衆院選で東京8区に出馬し、7万票余りを獲得し、周囲は東京選挙区では「基礎票は30万票ある」と豪語する。だが都議選では山本氏を支持する勢力が軒並み落選。前途は多難だ。
この調査でも、自民党の優勢が変わらないことが見てとれるが、負の要因もある。安倍内閣の支持率が最近は頭打ちになり、株価混乱によりアベノミクスの支持率も低下している。
「株価の上昇だけがアベノミクスではない」
自民党側は反論するが、昨年12月に安倍政権が発足して以来、株価の上昇こそが高支持率を支えてきた。株価が暴落すれば支持率が下がるのは自明の理だ。
しかし、ほかに「受け皿」がないことが、自民党に有利になっている。都議選ではアベノミクスに反対する人の4割が共産党に投票したという調査結果もあるが、地方を含む参院選では必ずしも共産党に票が動くとは限らない。
そのようななか、安倍政権は外交を利用して高支持率を維持しようとしているようだ。
6月17日と18日に北アイルランドのロック・アーンで行なわれたG8では、アベノミクスはおおむね好意をもって受け入れられた。
「日本の経済成長によって、世界の成長に資するような経済をつくっていく」
サミット初日のセッション1「経済をめぐる討議」で、安倍首相は高らかに「勝利宣言」した。
さらに首脳コミュニケには、「日本の成長は短期の財政刺激策、大胆な金融政策、そして民間投資を推進する成長戦略に支えられている」とアベノミクスが盛り込まれ、イタリアのレッタ首相に講演が依頼されるなど、世界の首脳から注目された。
その勢いで懸念となっている日中関係も、6月中旬に谷内正太郎内閣官房参与を訪中させて、日中首脳会談の可能性を探らせている。同時に7月下旬にはマレーシアやフィリピンなど東南アジア諸国を訪問し、中国への牽制も怠らない。
したたかさぶりを発揮する安倍首相。強い経済と強い外交という2つのカードを使い、安倍政権は参院選と秋の政局を乗り切るつもりだ。
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