福岡市42万人分の選挙人名簿の盗難と流失が疑われた事件。真相は、ソフト開発会社(株)オリズン(本社:福岡市中央区天神、江口裕代表)の社員が、バス内にデータ入りDVDを置き忘れたことによるものであったことは既報の通り。
オリズンは1972年6月設立のソフトウェア開発会社で、年商は5億円前後。自治体向け管理ソフトの開発を主力として安定した業績推移を見せているが、図らずも今回の事件で情報管理の甘さを露呈した。個人情報が高値で取引されるご時世である。大金にも等しい個人情報の詰まったDVDを公共のバスで運ばせる企業の情報管理意識は、無防備との誹りを免れない。
同じことは発注者側の行政や選管にも言える。今や、「委託先のことは知らない」では誰も納得しないだろう。入札の際にプライバシーマークやISO認証取得の有無を加味するのは、委託先が相応の体制を整えているかを確認し、委託業務の性質に見合った適正な企業か否かを選別するためのものである。他方で、そこですら金の力でどうにでもなる実情も否定できない。事実、オリズンは各種マークを取得しておきながら42万人分もの個人情報をぞんざいに扱っていた。行政の発注業務も、こうした実情を踏まえてなされる必要が出てくる。
本件の舞台となった福岡市とオリズンは、長年の取引関係にあったと聞かれる。そうしたなかで馴れ合いや癒着はなかったか、髙島市政の情報管理に対する姿勢が改めて問われている。
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