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【傑物シリーズ】官僚国家に挑む最強の野心家、楽天・三木谷社長(後)
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2013年6月28日 07:00

<強まる政治的アクション>
 産業競争力会議の委員に、民間人の三木谷氏をあてたことは安倍政権の"目玉"の1つ。政権発足後の昨年12月、安倍首相が初めて会った経済団体は日本経団連でなく、三木谷氏が代表を務める新経連だった。このパフォーマンスによって、振興勢力と手を結び、規制の壁を打ち破るというイメージを植えつけた。安倍首相は、規制改革を成長戦略の1丁目1番地と位置づける。ニューエコノミーのリーダーである三木谷氏に、その旗振り役を求めている。

 インターネット産業は、重厚産業の重鎮から「虚業」と軽視される。しかし、大手IT企業は若者層に抜群の知名度がある。今夏の参院選でインターネット選挙が解禁される。三木谷氏を通じて、若者層の支持を取り込みたいという政権の思惑も見え隠れする。
 新経連の動向も注目される。三木谷氏は原発への対応をめぐり、愛想を尽かして経団連を脱退した。自身が会長を務める「eビジネス推進連合会」を刷新し、12年6月に新経連として旗揚げ。思い通りに行動できる組織を手に入れたわけだ。

 新経連は夏の参院選で、20人近い候補者を支援する方針。支援対象者は、規制改革や成長戦略への対応で決めるという。政治を動かしながら、成長戦略の議論をフォローする考えだ。新経連を通じて、政治的アクションを強める可能性が指摘され、「政商にでもなるつもりか」との陰口もささやかれる。

<当事者であればこそ官僚を圧倒>
b_6.jpg このように、規制改革の旗振り役としての三木谷氏に対する評価は、決して芳しいものではない。むしろ、自分自身の利益のために動いている、と見なされる傾向にあるようだ。
 しかし、そうした評価は果たして妥当なのだろうか。三木谷氏が産業競争力会議の委員でなかったら、OTCネット販売解禁は実現しなかったと見られる。辞任をちらつかせて解禁を迫ったり、官僚が割り込む余地を排除しようとしたりしたが、そこまでしないと、官僚の壁を崩すことができないのも事実だ。いい子ぶった学識経験者では、規制に風穴を開けることはできない。

 その証拠に、官邸がにらみを利かせても、雇用分野や農業分野の規制を撤廃することはできなかった。これらの分野と同じくらい強力な抵抗勢力を持つ医薬品分野で、OTCネット販売を解禁できたことは、今回の成長戦略で数少ない収穫だった。

 ネット事業を熟知する三木谷氏だからこそ、官僚の詭弁をねじ伏せることができたと言える。ある関係者は「官僚はあの手この手を使って、だまそうとする。当該業界の関係者が委員として入っている場合は官僚と対等以上に戦えるが、そうでない場合は成果を出せなかった」と振り返る。
 効果が大きい半面、業界人が委員を務めると、必然的に「我田引水」の批判が出る。この点について、三木谷氏を知る官僚経験者は「得意のフィールドで主張するわけだから、我田引水となるのは仕方ない。新たな取り組みを行なおうとするのは、大変なこと」と擁護に回る。

<乱世に強いタイプ>
 今回はスケジュールの都合で、直接本人に聞けなかったが、三木谷氏は自著で次のように述べている。

 「世の中には2種類の人間しかいない。できる方策を探す人と、できない言い訳を考える人」

 彼はあらゆる手段を使って、何が何でも目標を達成するタイプの人間のようだ。世間では、そうした人を野心家と呼ぶ。だが、混沌とした乱世で、既存勢力を打破できるのは、彼のような野心家なのかもしれない。

 三木谷氏は昨年、都内で開かれた記者会見で「他社から尊敬されているか」という質問を受けた。それに対し、「尊敬されているといいが、違うと思う」と謙遜してみせた。他のネット事業者に聞くと、「産業発展のために、三木谷さんは必要」と評価する声は多い。

 官僚国家を打ち破るには、官僚とケンカができる人材を投入しなければならないが、IT業界を見わたす限り、三木谷氏に続くニューリーダーが見当たらないのも事実だ。OTCネット販売解禁で見せつけた彼のパワーに、引き続き、期待を寄せる業界関係者は多い。

 成長戦略の議論は第1弾を終えたばかり。今秋にも始まる第2弾で、"改革者"としての三木谷氏の真価が問われそうだ。

(了)
【木村 祐作】

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