九州電力の株主総会が6月26日、福岡市中央区のホテルニューオータニで開かれた。同社設立以来2度目となる無配、3,300億円にものぼる赤字の穴埋めのために積立金(3,570億円)を取り崩す考えがあることなど、電力会社として厳しい状況に置かれている旨の報告がなされた。約700名の株主が出席した。
福島第一原発の事故以来、原発の再稼働については議論がなされ続けており、その結論は見えていない。ひとつのきっかけとなるかもしれないものが原子力規制委員会による新規制基準の発表である。来たる7月、原子力規制委員会による原発の安全のための措置新基準が発表され、順次審査がなされていく。
その「高いハードル」をクリアしたものから稼働を許していくことになりそうだ。これは大きなことではある。原発の再稼働の是非は答えが出ていないのにもかかわらず、とりあえず動かしましょうという動きとも思える。
九電でも新基準が発表されたら、即座に玄海原発の3、4号機、および川内原発1、2号機の審査を申請するとしている。おそらく申請するからにはすでに万全の基準対策ができているのだろう。そういった流れがあるからだろうか。総会後の記者会見での瓜生道明社長は苦渋の表情を浮かべながらも自身の考えを示した。
「放射性物質の崩壊熱を人類はうまく安定的に活用する道を持たない限り生き残っていけないと私は考えています。その努力はこれからも我々は怠ることなくやってまいりたいと思っておりますので、そういった方向性について、株主の皆様からもご理解いただいたのかなというふうに思っております」
ここ3年で革新的な原子力技術が生まれたのだろうか。放射性物質を閉じ込める秘策ができたのだろうか。人類は、生命は、放射線に耐性がついたのだろうか。そうではないなら、福島の事故を忘れたのではないかと思われるような発言ともとれる。原発のメリットとリスクを天秤にたとえるならば、片方の皿には「電力とお金」、もう片方の皿には「市民の生命と財産」が乗る。電気を得るために命を懸けるという選択を日本人ははたして選ぶのだろうか。
原発は電力会社にとって、出せば必ずホームランを打つピンチヒッターのような存在だ。ただ、素行が悪く、マナーが悪く、敵からも味方からも好まれていないプレーヤーといったイメージか。それを使わなくてもよい利益の上げ方は考えられないのだろうか。九電は60年にもわたって九州経済を支えてきてくれた大きな柱のひとつである。その九電ならば、こんな苦境も乗り越える英知があるはずである。そもそも原発はなかったものとして企業戦略を立てていただきたい。または、原発に対する場当たり的な再稼働ではなく、長期的な考え方を示したうえでの再稼働申請としていただきたいと説に願う。近隣都市に住む私たちにとって、原発再稼働は他人事ではない。慎重な議論と誰もが納得のいく結論を望む。
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