<国民の血税で問題保育園を建設>
保育行政の本質が問われている福岡市の中央保育園移転問題で、現行の定員拡大をともなう移転建設計画に、国の基金から費用の3分の2、約3億円が支出されることがわかった。国の基金とは、待機児童の解消、保育士の研修など保育に関わる事業のためにつくられた「安心こども基金」。国から交付された交付金をもとに各都道府県で基金を造成・運用。13年度、同基金をもとに福岡県で造成した「福岡県子育て応援基金」から117億円が施設整備費として県予算に組み込まれている。
既報の通り、ラブホテルやパチンコ店が密集する立地という教育環境面、万全な避難経路が確保できていないという安全面から、反対が多い中央保育園(福岡市中央区今泉)の移転計画だが、高島宗一郎福岡市長が市民の声に耳を傾けようとしないなかで交付金の申請が行なわれていた。保育士や在園児の保護者などの市民から強い反対意見が出ている同移転計画だが、金の出処の3分の2は国民の血税。福岡市にとどまらず、国全体の問題と言っても過言ではない。
市などへの取材によると、福岡市は、今年(2013年)4月5日、交付金の申請に関わる内示協議を県に要請。県は同17日と18日の2回に分けて内示を決定。これを受けて市は、同25日、「福岡県保育所等整備事業費補助金の交付申請」を小川洋福岡県知事あてに提出。5月23日、県福祉労働部長から高島市長あてに交付決定が出された。補助金の額は1億4,780万1,000円と1億6,408万2,000円の合計3億1,188万3,000円。現行の移転計画では、問題の移転候補地に2施設建つため、補助金も2つに分かれている。ちなみに、市は同保育園を運営する事業者・社会福祉法人 福岡市保育協会へ、「保育所建設費等補助金」として3億5,087万円の交付決定を4月26日に出している。
<「待機児童の解消」で補助金が変動>
問題の移転計画において、市が大義名分に掲げる「待機児童の解消」だが、補助金の額に影響することも判明した。補助が認められる施設整備の要件は、老朽化した施設の建て替えや待機児童の解消など。具体的には、「待機児童の解消」につながる新築や増改築の場合、費用の3分の2が基金、4分の1が事業者、残り12分の1が市の負担となる。一方、定員増とならない建て替え・改築については、費用の2分の1が基金、事業者と市がそれぞれ4分の1ずつ。移転にともなう定員拡大が同移転計画で大きなウェイトを占めていることがよくわかる。
また、申請された4月の時点で、すでに反対意見はあがっていたが、補助金の交付決定に際し、その点は考慮されないという。補助金の交付決定に関わった県福祉労働部子育て支援課によると、政令市や中核市は保育所の認可権を有しており、書類上の不備などがなければ交付決定は出されるとのこと。県政で同問題に取り組む原中誠志県議(中央区)は、「土地選定が不透明なものに、国民から預かったお金を簡単に出していいものか」と疑問を呈す。ともかく、国民の血税が投じられる事業について、高島市長の責任は重い。市民のみならず、国民に対してもしっかりと向き合い、問題だらけの保育園建設の必要性を説明すべきだろう。
▼関連リンク
・福岡市議会で紛糾 中央保育園移転問題(前)~高まる土地選定の不透明性
※記事へのご意見はこちら