<まだスタートライン>
日本は、海洋資源としてメタンハイドレートに早くから注目し、01年に開発計画をスタートした。何とかしてそれを資源として取り出せないか、努力してきた。3月の海洋産出試験で海底に眠っているメタンハイドレートをガスとして取り出すことには成功したが、まだ商業生産ベースに乗せられるものではない。どうやって、商業生産ベースに乗せていくか。それを模索していく段階だ。コストがどれぐらいかかるか、経済性が合うのか。それは、18年にフェーズ3が終了した後に、総合的に評価される。
実用化への未来は、暗中模索の手探り状態が続く。経験、実績もなければ、知見もない。海洋産出試験を行ない、知見を作っていく。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の中塚善博氏は、「どういう探し方がいいか。陸上での試験をカナダでやって、減圧法が効率的であるということが分かった。ガスの生産に成功したが、『初めてやって、ガスが出る』ということがわかったにすぎない。まだまだ分からないことが多くて、01年のフェーズ1からの努力が実を結んでいるとも言えない」と、現実目線で、研究開発を続ける。
<南海トラフ海域に11年分の原始資源量>
資源エネルギー庁では、対象海域である東部南海トラフ海域(静岡県から和歌山県の沖合)に、日本のLNG輸入量(2011年)の約11年分を補えるメタンハイドレートが存在する(=原始資源量、存在する総量)と見込んでいる。
この約11年分という数字は、「原始資源量」での数字。そこにある総量である「原始資源量」と、採掘が可能な「埋蔵量」とは、意味が異なる。
「原始資源量」とは、その場所にあるメタンハイドレートのすべてをメタンガスに置き換えた場合の数字で、「埋蔵量」とは、技術面、経済面の両面からエネルギーとして取り出すことが可能で、回収することが可能な数字。資源として利用できる量(実際に生産できる総量)は、どれだけ回収できたかにかかっている。回収率を高めるための採掘技術の革新が期待される。
日本近海には、南海トラフ以外にもメタンハイドレートが埋まっている層があるのではないかと言われてはいる。96年に発表された論文では、日本の天然ガス消費量の100年分に相当するメタンハイドレートが日本周辺海域に存在すると書かれたこともあるが、実際のところは、南海トラフ海域以外では、試掘などの詳細な調査を行なっていないので「まだわからない」というのが現実だ。
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