老朽化した福岡市立中央児童会館と併設されている中央保育園の建て替えをめぐり、児童会館と分離し新築移転する計画が批判を浴びている。パチンコ店やラブホテルなどが立ち並び、狭い道路に囲まれた候補地に移転する計画を福岡市がゴリ押しし、ゴーサインを出した高島宗一郎市長に対して保育園の保護者ら市民の怒りが広がっている。
福岡市は2013年4月、候補地の福岡市中央区今泉1丁目の土地を(株)福住(福岡市)から約9億円で購入した。福岡市は当初、児童会館と中央保育園を合築した現地建て替えを検討としていたが、高島市長のトップダウンによって、児童会館から中央保育園を分離して新築移転しようというものだ。(詳細は、NET-IBの過去記事を参照していただきたい)
では、ここで疑問がある。
福住は、なぜ移転先の土地を購入して、福岡市に売却出来たのか?どうやってその情報を知ることができたのか?
その疑問を解く鍵の一つとして、福住に顧問として籍を置く博多港開発元社長の酒井勇三郎氏に会って話を聞くことが出来た。酒井氏は、福岡市元港湾局長、2011年、福住に天下り再就職した。
酒井氏は、なぜ福住への顧問となられたのかとの問いに対し、「博多港開発時代から福住さんとはお付き合いがありました。退職後、次の仕事をする予定もなかったので、福住さんから『顧問としていろいろ教えてください』と誘われたわけです」と述べ、自分からアプローチしたことではないと答えた。
酒井氏が福住に顧問として入ったのは2011年7月。その2カ月前の同年5月頃、福岡市は合築による現地建て替えから分離した単独移転に転換し、現地近隣で移転候補先の調査を開始した。同年7月、市政運営会議で、移転候補先があったとして単独移転の方針を決定。問題の今泉1丁目の土地を移転候補先に内定した。この時点では、土地の所有者は福住ではなかった。福住は同年9月、問題の土地を、所有者の徳増興産(北九州市)から購入。12年11月、福住と福岡市とで土地売買の協議が始まり、13年4月に売買契約を締結した。
福岡市が移転候補地に内定した土地を、そのわずか2カ月後に福住は仕込んで、売却に成功。見事なお手並みというしかない。偶然というには出来すぎている。どこから情報を得たのか。驚くべき情報収集力だ。
酒井氏の口からは「今、問題になっている土地購入に関して私はまったく関与していません。私が持っていた情報や人的パイプなど及ばないほどの情報を福住さんは持っているのです」として、関与を否定。福住の情報収集と営業能力の高さに舌を巻いたという。酒井氏によると、福住は一つの案件に対して、二重、三重に張り巡らせた情報網で事実確認を行なうというのだ。さすがとしか言いようがない。そのような高い情報収集力を持ちながら、社員には高飛車な様子はなく、好感が持てるというのだ。
福住は約9億円で売り切った。では、購入価格はいくらだったのか。「先ほど申し上げたように、この件に関しては全く知らないのです。しかし、とてつもなく経費を上乗せして売却するとは思えませんが」と、酒井氏は答えた。
となると、福住は酒井氏を顧問に迎えながら、こんな重要な案件を相談しないのだろうか。知らせていないとすれば、福住は酒井氏に何を期待していたのだろうか?
さらに酒井氏への取材は続いた。
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