福岡市中央区今泉にある中央保育園の移転予定地について、同地選定に至るプロセスに関する福岡市の主張が破綻した。市はこれまで、「土地の所有者と交渉せず、早期取得可能と判断した」といった主張を繰り返してきた。しかし、NET-IBの取材に対し、市に同土地を売却した(株)福住は「事業用の土地として購入した」と説明。これが真実とすれば、市は、民間所有の土地に公共施設を建設する計画を、『無断で』進めていたことになる。
<福住「事業用の土地として購入」>
NET-IBは10日、福住を取材。中央保育園の移転予定地となっている福岡市中央区今泉1丁目の土地1168.2m2の売買取引の経緯を訊いた。周辺関係者への取材で、2011年9月に同社が7億6,600万円で同地を購入したことは判明しているが、福住側は、「民民の取引のため、答えられない」とした。ただし、土地取得の目的については、「事業用の土地として購入した」と説明。駐車場やマンション建設などさまざまな土地活用の構想があったことを明かした。
福住が同地を購入した約1カ月前の11年7月26日、市は市政運営会議で同地を移転予定地として内定。この経緯について、担当局であるこども未来局は、「早期取得可能と判断」「ここしかない」といった説明を繰り返している。ただし、同地の所有者との交渉は一切行なっていないとしていた。土地の所有者に確認もせず、なぜ、「早期取得可能」と判断できたのか。直後、同地は売買され、福住に渡っている。市が福住に打診したのは、さらに2カ月後の同年11月となっており、それが同地所有者との最初の接触ということになっている。
市が移転予定地として白羽の矢を立てた土地が、その直後、「事業用の土地として購入した民間業者」に渡っていた。本当に接触がなかったとすれば、「早期取得可能」との判断は、根拠のない〝でまかせ〟としか言いようがない。「待機児童解消」の大義名分があれば、どんな土地であろうと取得することができるつもりなのだろうか。そうであれば、なおさら、教育環境や安全面で問題のある土地でなくてもいいはずだ。市が「早期取得可能」「ここしかない」と判断した理由は「別にある」としか考えざるを得ない。
高島宗一郎福岡市長は、移転計画に反対する保育士や在園児の保護者らと近々面談する方針のようだが、ことここに至っては、ただ会って話を聞くだけでは済まない。さまざまな疑惑(土地転がし、パチンコ店への便宜供与など)や不透明なプロセスについて納得のいく説明が求められていることを頭に入れておくべきだ。また、同地の取得にかかった8億9,900万円は市民の血税である。また、新保育園の建設にかかる費用の3分の2は国の基金から支出される。高島市長には、150万の福岡市民を含む1億3,000万人の日本国民にも説明が必要である。
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