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東電、謝罪したとウソ~自殺遺族に金を払うが加害者意識ゼロ
社会
2013年7月12日 11:36

 福島原発事故に無反省・無責任な東京電力には、新たに"嘘つき"という称号を進呈したい。マスメディアを使った情報操作の手法は今に始まったことではないが、同社の嘘で塗り固めた会見内容がわかった。
 福島第一原発事故で自殺した農家の遺族への謝罪を拒否している問題で、東電が「(謝罪を)拒否した認識はない」、「お詫びとお悔やみを申し上げている」と記者会見で述べたのだ。遺族側弁護士が7月12日までに、明らかにした。
 謝罪してもいないのに、謝罪したかのように振る舞う東電の姿勢には、加害者としての認識がまったく感じられない。

 自殺したのは、福島県須賀川市の農家樽川久志さん。原発事故後、農作物への放射能汚染が広がり、キャベツの出荷停止・摂取制限指示があった翌日の早朝、自殺した。代理人弁護士によると、原子力損賠賠償紛争解決センターが事故と自殺との因果関係と東電の法的責任を認め、それを前提として東電が賠償金を支払う和解案を示し、東電と遺族の双方が受け入れた。

touden.jpg 東電は6月21日の記者会見で、「社員がご遺族のお宅を訪問してお詫びさせていただいております」と発言。6月24日には、「先日お答えしたとおり。会社の代表として賠償担当者が遺族にお詫びとお悔やみを申し上げています」、「6月6日、賠償担当者が弁護士会館でお会いした際にお詫びしてお悔やみを申し上げている」、「(謝罪を)拒否した認識はない」と述べた。7月3日の記者会見では、「自宅を訪問」なのか「弁護士会館で」なのか問われて、「弁護士会館で開催された会議の場でお詫びし、お悔やみを申し上げたと聞いている」と、こっそり訂正。6月6日の弁護士会館とは、原発事故被害者の東電・政府交渉の席のことだ。(NET-IB既報。フクシマ事故全面賠償を~原発被害者が東電・政府交渉)。

 その場で取材していたから断言できるが、6月6日の交渉での東電の発言は謝罪というものではなかった。「遺族に対する何らかの行動で誠意を示すこと」を求めた遺族側の要望に対して、賠償の担当者である紫藤英文部長は、東電代理人が5月に出した回答書を読み上げて、「この内容以上のことは私から差し支えたい」と述べ、最後まで謝罪を拒否した。読み上げた回答部分は「本件事故により、大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、あらためて心よりお詫び申し上げるとともに、故久志様のご逝去に当たり心よりお悔やみ申し上げる」としている。回答書には、「要望に直接応ずることはご容赦いただきたく考えております」とあり、謝罪拒否は明らかだ。

 「事故で大変なご迷惑とご心配をかけた」というのは、人間の命に対する謝罪ではないし、原発事故が原因で自殺した責任を認めてもいない。だから、交渉の席で、遺族や原発事故で被害を受けている福島県民が「納得できない」と怒りを爆発させたのだった。それに対し「これ以上言えない」というのが、東電の公式発言だった。
 その場で遺族側が国に対し「東電に謝罪せよと指導を」と求めたところ、「この場で謝罪しろと言って謝罪しても、樽川さんの気持ちは納得しない。樽川さんが納得する形で(指導を)やっていきたい」(資源エネルギー庁原子力損害対策室企画官)と答えている。東電が謝罪を拒否したまま交渉が終わったことは、参加した遺族、東電自身、政府の共通認識だった。
 また、「自宅を訪問」というのは、賠償の担当者が「個人として線香をあげる」と訪問したもので、「会社としての謝罪」とは違う。遺族ご本人から聞いたので間違いない。

 東電は、記者会見場には、和解した相手がいないことをいいことに、すぐにばれるウソをついて、マスメディアに「謝罪した」と思い込ませた。典型的な情報操作だ。「謝罪拒否」と報じられたのが痛かったのだろうが、原発事故と自殺の因果関係を認めていながら、加害責任を感じてもいない東電の姿勢を示す発言だ。

 遺族側弁護士は「東京電力が遺族宅を訪問する前提として、本件自死について会社としての見解が示されるべきだ」と指摘。今回の東電の姿勢は、「被害を生じても賠償さえ支払えばよい」とするもので、反省が欠如した姿勢を象徴していると批判し、真摯な謝罪を求めていくとしている。

 口先だけの謝罪という言葉があるが、東京電力の対応は、人間の命を奪っても責任を感じないアウトロー(無法者)そのものである。原発事故によって莫大な放射性物質が放出され、健康や命を脅かし、広大な土地、大気、水を汚染し、いまだに約15万人が元の生活に戻ることができない避難生活を送っている。多くの住民が放射線管理区域で厳重に管理すべきレベルの放射能のもとで生活している。東京電力に言わせれば、放出された放射性物質は「無主物」(所有者がいない動産)だから、もはや東電の所有物ではない放射性物質がどんな被害を与えようが「知ったこっちゃない」のかもしれない。例えて言えば、人混みで機関銃を乱射しても、発射された弾丸はもはや「俺のものではないから、その弾に当たって怪我しようが死のうが、俺の責任ではない」とうそぶいているようなものか。

 被害に対し、加害者の東電と国は真摯に謝罪していないからこそ、賠償金額をけちり、再発防止よりも原発再稼働の道を突き進むのである。7月16日には、第1回口頭弁論が開かれ、逃げ場のない公の法廷という場で、東電と国の責任が明らかにされることだろう。

【山本 弘之】

【編注】
 記事中で、第1回口頭弁論とある訴訟は、「原発事故による健康、自然環境、生業などすべての被害の回復を求めて、事故当時福島県内などに住んでいた住民800人が福島地裁に提訴した、『生業を返せ!地域を返せ!福島原発訴訟』」のことです。


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