着工延期になった後に、市政トップが現地を視察したことで「土地ありき」との見方が強まった社会福祉法人福岡市保育協会中央保育園の移転計画。「着実に進める」との方針を崩さない高島宗一郎福岡市長は、ついになりふり構わない行動に出た。
<ピエロのこども未来局>
12日、高島市長は中央警察署を訪問。移転予定地の周辺における交通安全と治安対策について、所轄の中央警察署と担当局のこども未来局、中央区役所の協議の場を設けるよう要請したと語った。そして、きょう(16日)、高島市長は、移転計画に反対する同保育園の保育士や在園児の保護者らと面談する予定となっている。
移転予定地の安全面の不安について、保育士や保護者らは独自の調査を行ない、具体的に問題点を指摘してきた。NET-IBでは動画で詳報している(関連リンク参照)。市議会においても安全面での指摘が続出した。対するこども未来局は、局長以下、苦しい答弁を繰り返し、「待機児童解消」の1点で乗り切ろうとした。さらに保護者が誰も参加しなかった4日の説明会では、取材に訪れていた報道陣を前に、現在の移転予定地に保育園を建てた際の安全対策について説明。福岡市消防局の職員も参加し、火災時の対応などについて説明していた。
ところが、今まで「現場対応」と逃れていた高島市長が11日、移転予定地を視察。市民の多くが、「定員300名の保育園は無謀」と呆れている土地周辺の状況を見て、「さすがに強行突破は困難」と悟られたようだ。しかし、警察に市長自ら、交通安全と治安対策の協議を申し出るということは、現在の移転予定地にその必要性があると公言したも同然である。これまで現場で苦心惨憺、支離滅裂な説明を繰り返していたこども未来局はまるでピエロ。局長以下職員一同、コント劇なみの大ズッコケをしたことだろう。
<最大の問題は土地選定プロセス>
11日の現地視察といい、わざわざ記者クラブにアナウンスしてからの警察訪問といい、高島市長お得意のパフォーマンスである。あとは、保育士や保護者らに涙の対面を行ない、理解を求めるといった手順だろうが、今は、安全面よりも大きな問題がある。「土地ありき」で始まったこの移転計画は、土地の選定プロセスが不透明であり、土地転がしやパチンコ店への便宜供与といった疑惑まで浮上しているのだ。(株)福住が事業用として購入していた土地を、その意思を確認せずに「早期取得可能」、「ここしかない」と判断したという主張を理解できる者がどれだけいるだろうか。
裁判沙汰にもなった、こども病院移転計画と同じく、高島市長は、中央保育園の移転計画について、土地選定の不透明なプロセスを明らかにすることが求められている。「なぜ、この土地でやらなければならないのか?」という疑問に対し、知っていることを詳らかに話さなければ、誰も納得できないだろう。「待機児童解消」が取って付けた理由であることを認めたも同然なのだから。
▼関連リンク
・動画で見る福岡市の中央保育園移転問題~移転先に子どもの安全はあるのか?
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