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海洋資源開発で日本を世界一の成長産業国家へ(中)
未来トレンド分析シリーズ
2013年7月17日 07:00

 では、具体的な「海からの贈り物」として、注目すべき価値の源泉とは何であろうか。一般的には、海洋資源として認知度が高いのは石油、天然ガス、メタンハイドレード等である。しかし、これらの海底資源の開発には莫大な資金と時間、そして国際的な争奪戦という高いハードルが横たわっている。

sea_2.jpg その点、日本にとって今後の循環型エネルギー社会の構築を模索する上で極めて有望と思われる海洋資源の一つは"藻類"であろう。というのも、地球上に存在するあらゆる創生物は藻類が行なう光合成によって二酸化炭素を資源として固定化することで得られるからだ。言い換えれば、こうした過程で誕生する資源は「永遠に枯れることのない資源」にほかならない。その意味では、物質循環の象徴的な存在と言えよう。

 たとえば、藻類を原料としたバイオ燃料等がその好例だ。沖縄の石垣島ではミドリムシからジェット燃料に適したオイルを精製する研究が進んでいる。サトウキビやトウモロコシなどのバイオ燃料と違い、ミドリムシは食料生産と競合せず、世界的な食料価格の変動に影響を与えたり、逆に影響を受ける心配もない、まさに自然と調和したエネルギー。

 しかも、二酸化炭素を吸収して光合成で育ったミドリムシから製造する燃料は燃やしても空気中の二酸化炭素を増やすことにはならないため、究極の循環型エネルギー源と言えそうだ。この技術を商品化する研究実験を推進しているのは石垣島に開発拠点を持つユーグレナ社。藻類からバイオ燃料を生み出す最先端企業である。石垣市の応援を受け、東京大学とも連携し、油脂生産性の向上を図っている最中である。防衛省も近未来の国産ジェット燃料として関心を寄せているほど。

 その背景には、このところ航空機向けの石油燃料が需要増加で価格が急上昇していることが指摘されよう。ジェット燃料の価格は2000年以降、毎年12%のペースで値上がりしている。そのため低価格でCO2の排出も抑えられるバイオ燃料は「海からの贈り物」と言っても過言ではない。欧米企業も研究開発に余念がない模様だが、沖縄発の新たな自然エネルギーが世界のモデルとなる日も近いのではないか。

 このように、藻類はエネルギー資源、あるいはバイオケミカル資源としての活用が期待される。さらには、藻類に凝縮されたレアアースの回収や医薬品への活用など高付加価値資源化も視野に入ってきた。また、藻類そのものを食糧、飼料、肥料として活用する方法も研究が進む。加えて、海洋環境の悪化傾向に対して、藻類の持つ浄化作用を活かした水産資源の保護、育成活動への応用なども検討されている。

 そんななか、最近、特に注目を集めているのは、「フコイダン」である。これはコンブ、ワカメ、モズクなどの粘質物に多く含まれる食物繊維で、1996年の日本ガン学会で制がん作用が報告されたため、健康食品として一躍脚光を浴びるようになったもの。いまだ、科学的、臨床的なデータは限られているが、このフコイダンには「肝機能を改善する」、「血圧の上昇を抑える」、「抗菌作用がある」、「アレルギー体質を改善できる」、「コレステロールを下げる」などの効果も検証されており、内外の医療関係者からも期待が高まる一方だ。従来から知られる健康食品のクロレラも含め、中東地域からも引き合いが相次いでいる。

 こうした発想で海洋資源の利用範囲を広げていくことは「海洋国家・日本」にとって極めて重要な意味を持つに違いない。まさに、アベノミクスの成否を左右する「成長産業」としては、大いに検討に値するといえるだろう。我が国にとって幸いなことに、洋上風力発電や海洋温度差発電、あるいは潮流発電等から得られる自然エネルギー源と組み合わせれば、より実用性の高い海洋資源戦略の要(かなめ)となるはずだ。

(つづく)
【浜田 和幸】

≪ (前) | (後) ≫

<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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