アジア各国では日本の伝統文化の潮流がつくられている。台湾でも昨今、宝塚歌劇や落語といったさまざまなイベントが開催されるなど、日本の芸能・文化に対する受容が幅広い。日本を訪れる台湾人観光客にも、能や狂言、歌舞伎などの「本場」を見たいという需要から、旅行代理店が団体ツアーに組み込むケースも増えている。
「アジアの玄関口」を標榜する福岡でも、多くのアジア人観光客に向け、観光アピール材料を発掘しているが、アジアの人々に向けた材料として注目されているものの1つに『能』がある。日本の伝統芸能の1つである「能」は、狂言とともに南北朝時代から現代に演じ継がれ、世界で最も長い伝統を持っている。多くの外国人が「能」「狂言」という言葉は知っていても、公演会場に訪れたことがある人は少なく、顧客獲得において新規開拓の「伸びしろ」が期待できる。
福岡市には、市内最大級の公園・大濠公園の敷地内に能楽堂があり、能の文化を吸収しやすい環境にある。8月1日には、能楽堂で「能と花火を楽しもう!」と題して、能の公演と大濠公園の花火大会を両方堪能できるイベントが開催される予定。9月28日には、「能に親しむ会・福岡公演」と題して、能、狂言、仕舞の公演が開かれる予定だ。また、バックステージツアーや「能を見るためのワンポイント」「物語をのぞいてみよう」といったテーマでの講座「ようこそ能楽堂へ~0から楽しもう~」も開かれており、『能』について気軽に学ぶことができる。
講座を主催する能楽師・多久島法子さんは「アジアからのお客さまが観光ツアーのなかで公演を見に来てくださることもある。能面や装束に興味がある方が多いようで、体験型の場合は、実際に能面をつけて「すり足」を体験してもらったり、代表の方に装束をつけていただいたりすることもできる。面、装束の美しさや、囃子の生ライブの力強さに加え、能楽堂という『非日常の神秘なる世界』を楽しんでほしい。今後も多くの方に足を運んでもらい、能の文化に親しんでもらえたら」と話している。
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