佐賀競馬の歴史は古い。初開催は1948年10月で、当初は佐賀市に競馬場があったが、72年に現在の鳥栖市江島町に移転した。佐賀県と鳥栖市が共同で運営しており、今年で移転から41周年目を迎えた。夏本番を迎え、小倉に佐賀に九州競馬は盛り上がりを見せる。新しい動きを見せ始めた佐賀競馬に迫った。
佐賀競馬に携わって39年。佐賀県競馬組合次長の江崎保夫氏に佐賀競馬の現状とこれからについて聞いた。
――地方競馬の特徴を教えてください。
江崎保夫氏(以下、江崎) 地方競馬は都道府県が運営を行ないます。県が管轄する場合は、県域内での活動になり、県外での広告普及活動にはやや抵抗がありました。当初は佐賀市内にありましたが、佐賀市が都市化するにしたがって、馬の移動などトラブルが発生。そこで、移転を検討する中で、福岡都市圏に近い鳥栖への移転を決定しました。前述のように地方競馬は活動範囲が限られており、外への情報発信がしづらい状況にあります。競輪、競艇は選手が各地を転戦するので、スター選手を地方でも応援することができますが、地方競馬はそれほど馬の移動がなく、すべてその地方で完結してしまいます。
中央競馬はどこの競馬場に行っても有名な馬に会えます。ネットの導入も中央競馬が先駆けて行ないましたし、情報の出し方が非常にうまいと思います。そういう意味では、地方競馬は県外に情報を出すのが不得手かもしれません。
――佐賀競馬の魅力は?
江崎 規模がそれほど大きくないので、どこにいても馬場に近く、レースを見て換金するのも、次のレースの投票に行くのにも便利なコンパクト設計になっています。お客さんは競走馬のそばまで近付けるので、馬の息遣いまで感じることができます。中央競馬では、観客席が馬場からずいぶん遠くにあり、近づくことはできません。このようにダイナミックな競走を身近に感じられるのが魅力です。
また地方競馬では、所属する馬の頭数が少ないので、レベルは中央には劣るかもしれません。しかし、地方競馬の競走馬は出走頻度が高く、毎週走る馬もいます。気に入った馬がいれば毎週競馬場で会うことも可能です。バックヤードツアーも開催しており、一般の方が厩舎を見学できるイベントも開催しています。
――ファン離れが続いているということですが、新しいファン層の開拓には?
江崎 一番の基本は商品。商品はレースだと考えていますので、見ごたえのあるレースを数多く提供することが第一です。特に中央との交流戦を目玉にし、普段はネット投票しているお客さんに競馬場に来ていただけるように取り組んでいます。一方で施設を充実させ幅広いお客さんを呼べるようにしたいのですが、なかなか設備投資まで回らないのが現実です。理想を言えば、これだけ広い土地があるので、レジャー施設を作り、競馬だけではなく、遊べる・楽しめる場所として提供したいと考えています。
――8月に大きなレースがあるそうですが。
江崎 はい。8月13日に佐賀競馬夏のビッグレース「サマーチャンピオンJpnⅢ」が開催されます。このレースは中央との交流戦で、中央から有力な馬も騎手も参戦します。夏の佐賀競馬が最も盛り上がる1日ですので、ぜひたくさんの方にご来場いただきたいと思っています。施設内外にキッズコーナーを設けています。パドックで馬を見て、スタンドからレースを見て、待ち時間にはキッズコーナーへ。家族連れも楽しめる1日になると思います。お待ちしております。
【取材メモ】
来場者は減っていると聞いたが、取材当日、日曜日12時、第1レースから比較的お客さんは多かった。なかには若者や女性の姿も。馬場のそばまで近づきレースを観戦したが、江崎氏の言うとおり、迫力満点だった。馬の息遣い、騎手の躍動感、舞い散る砂。外にはパドックもあり、出走前の馬をじっくり観察できる。馬券を握りしめ、ひたすら結果を待つのもいいが、馬を感じることができる、それが佐賀競馬だと思った。
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