残り任期も2年を切り、これまでの実績が問われてくる高島宗一郎福岡市長。以下、順不同に、あてこんでいた国の補助金が出なかった『オープントップバス』、区長不在が続く『福岡市カワイイ区』、市職員不祥事の歯止めにならなかった『禁酒令』、猛烈な反対を受けて市役所周辺に街宣車を集めた中国人公務員研修受け入れ、基本ファーストクラスで移動する国内出張などなど、市民が不審に思う内容が次々と明らかになっている。さらに、強調を通り越して誇張、もはや「ペテン」と言わざるを得ないような小冊子が市民に配布されていることがわかった。
7月上旬、NET-IBに読者から、高島市政に関するメールが寄せられた。
「よくわかる福岡市政」という小冊子を見ました。福岡市によく寄せられる質問に回答するというもので、趣旨は共感できるものでした。ところが、中を見てみるとほぼ全ページに市長のイラストが散りばめてあり、しかもたとえば「学校でのいじめ対策」ではいじめっ子に対する正義の味方に扮するなど、市長のイメージアップという目的がハッキリと透けて見えるものだったのです。
「市民からのよくある質問に答える」という体を取りながらも、実態としては「高島宗一郎の実績集」のような代物で、正直なところ公費を使っての選挙活動としか思えません。なぜあんなに市長を前面に押し出す必要があるのか。1年後に選挙を控えて、実績をPRしたいということ以外に、どう考えても理由はありません。
左にある2種類のグラフのうち上段は、同冊子25ページ目にある福岡市の借金(市債)について「返済できるの?」という質問に答える内容にあった市債残高の推移を表したグラフである。「着実に返済しています!」として、2009年度の市債残高2兆5,158億円が13年度に2兆4,480億円まで減ることを示しているが、グラフでは、「市債残高が大幅に減っている」「数年後にはゼロになるのではないか」といったイメージを持ってもおかしくない。実のところ、このグラフは、1目盛を100億円で設定しており、省略された部分は『とんでもない長さ』になっているのだ。09年度から13年度までに減る市債残高678億円、約2.7%減と、お世辞にも大幅に減っているとは言い難い状況。グラフには省略についての説明がなく、市民の誤解を招く可能性は極めて高い。
情報公開によって得られた文書によると、「よくわかる福岡市政」は、2万5,000部印刷され、市役所や各区役所、公民館、市民センター、図書館などさまざまな公共施設に配布。同じ内容は福岡市HPでも掲載されている。また、市役所の各部が実施する出前講座では、広く市民に周知するため市民に配布するように広報戦略課が各部に依頼しているという。このグラフを目にした地方議員は、「典型的なグラフのマジック。すごいことをやっていると言いたいのか!」と苦々しげに語った。ちなみに、同じ市債残高のグラフでも、福岡市が予算や財政状況を周知すべく、市役所や各区役所で配布しているパンフレット「ふくおかしの家計簿」のもの(下段)は、縮尺がまったくの別物である。
「よくわかる福岡市政」は、プロポーザルによって選ばれたデザイン業者に、市側が指示を出すかたちで制作された。広報戦略課は取材に対し、問題のグラフについて、「戦略課と財政局財政調整課が協議をして決めた。市債残高が減っているのをわかりやすく説明するため」と説明。グラフが不適切とする記者の指摘に対し、「数字は間違っていない」と、開き直っている。財政調整課は、記載について「説明が不十分だった。以後、気をつけたい」と答えた。
記事下には、問題のグラフについて、省略部分をノーカットにして再現したものを掲載する。
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・よくわかる福岡市政 ペテングラフは市の指示で追加
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