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2013参院選

参院選・東京 自民と民主、それぞれの仁義なき戦い(前)
2013参院選
2013年7月25日 16:40

 自民党の圧勝と共産党の躍進で終わった参院選だが、17日間の選挙期間中にさまざまなエピソードが生まれている。いやそれらは、「仁義なき戦い」と称した方が正しいかもしれない。

 7月21日の夜、各政党の開票センターでは番記者たちがテレビ画面に見入っていた。各局が次々に当確を打っていく。途中で各選挙区の情勢を伝える。意外だったのは、東京選挙区に立候補した自民党の武見敬三氏が苦選したことだ。武見氏は選挙戦の前半の予想では1位、悪くても3位以内にランクされており、余裕で当選と見られていたのである。
 自民党の丸川珠代氏には、各局がゼロ当確(投票締め切りの午後8時と同時の当確)を打っていった。次に公明党代表の山口那津男氏か。いや共産党の新人・吉良よし子氏も優勢だ。無所属の注目候補である山本太郎氏も伸びている。

 彼ら4名で上位4議席は確定。残り1議席は武見氏と民主党の鈴木寛氏で争われた。画面を見ていた記者の間で、「ほう」と溜息が洩れた。これには「裏」がある。実は自民党の丸川氏と武見氏で、壮絶な「内部抗争」を演じていたのだ。

jimintou.jpg 参院選公示の4日の午前、安倍晋三首相は被災地である福島県で第一声をあげた。そしてすぐさま東京に引き返した。午後2時に池袋で武見氏とともに街宣し、午後4時には有楽町で丸川氏とともにマイクを握るためだった。池袋に集まった観衆は2,200名、有楽町に集まったのは1,200名と言われている。当初は武見氏は丸川氏を上回っていた。焦ったのは丸川氏だ。東京都連では組織票は武見氏、浮動票は丸川氏という「振り分け」があった。しかし丸川氏には当選とは別の「ハードル」があったのだ。

 実は、丸川氏は170万票以上の大量得票を課せられていた。3年前の参院選で蓮舫氏が獲得したのが171万票。それを上まわれば、丸川氏は「特別のご褒美」がもらえることになっていた。すなわち念願の大臣就任である。
 反対に100万票を下回れば、「6年後の参院選で公認は難しい」ともされたという。野心満々な丸川氏にすれば、なんとしても170万票をクリアしたい。だがスタートから武見氏に抜かれており、このままでは不可能だった。

 政治家生命の危機を感じた丸川氏は、「私は6年前に安倍晋三首相に1本釣りされた。もっと票をまわせ」と、党本部にねじこんだ。その甲斐あって大臣経験者などが次々と応援に入り、最終的には丸川氏は無事にトップ当選を果たす。だが獲得票数は約106万票。非常に微妙な数字と言える。その煽りを受けて、武見氏は最下位当選となったわけだ。実は武見氏はさほど組織動員力を持っていない。

 武見氏は1995年の参院選で比例区で初当選し、参院議員を2期務めたが、その原動力になったのは、亡父の太郎氏が会長を務めた日本医師会だった。しかし武見氏自身は医師ではなく、在任中は外交に専念し、厚生関係には見向きもしなかった。さすがに2007年の参院選では医師会は武見氏の支援を中止する。スポンサーがいなくなった武見氏は、有権者にアピールする旗やボードすら作れず、秘書に画用紙にマジックで名前を走り書きさせ、それを振って戦った。当然結果は落選だった。

 このたびは復活をかけた出馬だが、鈴木氏と5議席目を争っているとき、自民党東京都連および武見陣営は気が気ではなかっただろう。ここ数回の参院選では、自民党は候補を2名擁立しても、1名しか当選を果たしていない。
 6年前の参院選もそうだった。丸川氏に住民票の移転手続きのミスで投票権がないなど問題が次々と発覚したため、現職で組織票を持つ保坂三蔵氏から丸川氏に票を譲ることにしたのだが、調整に失敗して保坂氏がまさかの落選をする。その反省を持って、3年前の参院選では、本命の中川正春氏と浮動票狙いの東海由紀子氏を擁立。中川陣営は最後まで力を抜かず、71万票を獲得して当選。東海氏は30万票に届かなかった。

 再度6年前の悪夢がよみがえる。丸川氏に票をまわしすぎたか・・・・・・。しかし武見氏は無事に当選を果たした。

(つづく)
【永田 薫】

| (後) ≫


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