市民へ配布する小冊子「よくわかる福岡市政」で、市債残高のグラフを1目盛100億円単位という縮尺で拡大し、大幅に減少しているように思わせる『印象操作』を行なっていた福岡市。そのことが強調を通り越して誇張、誤解を招くペテンであることは既報の通り。市側は、このペテングラフについて、「市債残高が着実に減っていることをわかりやすく市民に伝え、安心させるため」と説明。その言は、「退却」を「転進」という言葉にすり替えた戦時中の日本を思い起こさせる。なぜならば、福岡市が2008年6月に策定した財政運営の指針「財政リニューアルプラン」の見通しに『市債残高の減少額』が追いついていないという事実があるからだ。
福岡市は、市債残高が2兆7,092億円に達した04年に「財政健全化プラン」を策定。歳入・歳出の両面で健全化の取り組みを進め、同年に市債残高が減少に転じるなどの成果を上げた。財政健全化の取り組みはその後も続けられ、明確な目標とそこに至る道筋を具体的に示す指針として策定されたのが、「財政リニューアルプラン」だった。計画期間は08年度から11年度までの4年間であるが、市債残高の見通しは18年度まで記載されてある。この内容は、福岡市HPでも閲覧が可能となっている。
図は、「財政リニューアルプラン」の見通しと実際の市債残高をペテングラフに近い縮尺で比較したものである。11年度まで、市債残高は「財政リニューアルプラン」の見通しよりも低いものの、12年度の残高と13年度の見込みにおいては、見通しを超えている。
高島宗一郎福岡市長が市長に就任したのは10年12月。高島体制を完成し、自分の色が反映された予算が組んだのは12年度から。つまり、高島市政になってから、過去の財政健全化の見通しよりも市債残高の状況は悪化している。13年6月、高島市政は新たに「行財政改革プラン」を策定したが、「よくわかる福岡市政」でも、過去の計画との違いについて説明すべきではなかろうか。
「19政令市において、市債残高が4番目、市民1人あたりに換算した約171万円は2番目に高い」(11年度)という事実がある。福岡市の財政状況については、NET-IBでも度々警鐘を鳴らしてきた(関連リンク参照)。さらに、財政局が中心となって、PPP(官民共働事業)の推進を施策として打ち出したのも「厳しい財政状況」が理由だ。ちなみに、その1号案件が、社会問題化した中央保育園移転問題につながった福岡市立中央児童会館の建て替え事業である。
求められているのは、市政についてのウソやごまかしのない丁寧な説明だ。おそまつな二枚舌を使い続ければ、市政の信用が着実に減っていくだろう。
▼関連リンク
・高島市長!無策なら市財政は破綻します!!(1)
※記事へのご意見はこちら