「我々は何も変わっていません。3.11以降、我々をみる日本、世界の目が変わりました」
UNIDO(国際連合工業開発機関)と大きな契約を締結した直後の海野裕二氏にきいた。
<落差が限りなくゼロでも発電可能!>
――受付においてある盾、賞状の数がすごいですね。いくつぐらいありますか。
海野裕二社長(以下、海野) おかげさまで、今年は第25回「中小企業優秀新技術・新製品賞」において、優良賞と環境貢献特別賞をいただきました。昨年は「新エネルギー財団会長賞」をいただき、2008年の「東京都ベンチャー技術大賞優秀賞」を含めて、国内外での受賞歴は10を超えました。とくに3.11以降は、受賞以外でも、国内外から、さまざまなプログラムへのお誘い、会議、展示会のお話をいただいております。我々は何も変わっていませんが、3.11以降、我々をみる日本、世界の目が変わりました。
――低落差型「流水式小水力発電」とはどのような技術なのですか。
海野 水は高いところから低いところに流れます。水力発電の原理はこの落差を利用して電気を起こします。その点では我々もまったく変わりありません。上から下へ流れる位置エネルギーを利用します。我々の最大の特徴は、この落差が限りなくゼロに近い状態でも発電できるということです。
今までの水力発電は最初落差10m~15mで開始し、その後はどんどん落差を拡げることに研究が進められていきました。日本のエネルギー政策は地産地消というより、水力でも、火力でも大規模化そして原子力へとさらに超大規模化していきました。そうしたなか、我々は、愚直に、10m以下の落差で効率的に発電はできないかと研究してきました。もちろん、3.11が起こり、今のような時代になることなど予測していなかったことです。
しかし、この10年の試行錯誤を含めた研究開発のおかげで、低落差と言う点では競合他社より何年も先に行っていると感じています。現段階では、すべての契約が"随意"の評価をいただいております。
<上水・下水処理上の設計技術が活きる!>
――最初から流水式小水力発電に注力して研究してきたのですか。
海野 私は大学を卒業して、大手ゼネコンで港湾や河川の設計をてがけ、1989年に35歳で独立して設計会社を設立しました。スタッフを約70人抱え、官公庁を主要な顧客として、上水・下水処理場などの設計を行なっておりました。しかし、次第に公共事業が先細りになり、次の成長戦略として、現在の事業をスタートさせたわけです。今から約10年さかのぼる2004年のことです。
私は根っからの技術者で、上水・下水処理場などの設計などを行なう際に、いわゆる「水力」というものの偉大さ、すごさを身に染みて感じていたことも大きな理由です。「流水に内在する膨大な未利用エネルギーを有効活用できないものか」と、絶えず考え続けておりました。そこで、従来にない新しい水力発電装置である流水式小水力発電装置「ストリーム」の技術開発を始めました。
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