九州電力の2カ所の原子力発電所付近から風船を飛ばして、過酷事故が起きたときの放射性物質の拡散・飛散の様子を市民の手で調べる「風船プロジェクト」が7月28日、実施された。玄海原発(佐賀県玄海町)、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)のそれぞれ近くから、約1,000個ずつの風船を同時にリリース。風船にはメッセージカードが付けられていて、市民らの「原発なくそう」の願いを発信した。一方、九州電力は再稼働へ向けて、新規制基準の施行を受けて、川内原発1、2号機、玄海原発3、4号機の審査を申請している。
風船プロジェクトは、それぞれの原発の操業差し止めなどを求めた「原発なくそう!九州玄海訴訟」、「原発なくそう!九州川内訴訟」の原告らが中心になって実施しているもの。玄海原発訴訟関係では、2012年12月の第1回以降、今回が3回目。川内原発訴訟関係では初めて。参加者は「放射性物質がどれだけ広がるかという危険を知ってもらうとともに、原発をなくしたい私たちの思いが全国に広がってほしい」と期待を込めた。風船を見つけた人には、発見の連絡をお願いしている。
玄海原発から約4kmの波戸岬海浜公園(佐賀県唐津市)には、子ども連れの家族ら約250人が集まった。
午後2時36分、カウントダウンとともに、玄海、川内で同時に風船をリリース。合計約2,000個の風船が、「原発のない国にしましょう」「子どもたちに美しい地球を残したい」などとメッセージカードに書かれた「脱原発」の思いを乗せて、空に舞い上がった。
2歳の男の子を連れて参加した福岡県糸島市の女性(39)はNET-IBの取材に対し、「もし玄海原発で事故があったら、福島の被害に重なる。原発をなくしたい」と語った。北九州市の永田由紀さん(54)は、「再稼働は許せない。福島の汚染水はますます深刻で、収束どころではない。電力会社は命より金儲けだ」と話した。
風船のリリース前に集会を開き、波戸岬海浜公園には「原発なくても電気は足りてる」、「安全神話はもう聞き飽きた」、「原発再稼働はムダ金つくる」と、NO原発コールが響きわたった。
主催者代表の柳原憲文氏は「新規制基準審査の申請は、『原発なくせ』の世論への真っ向からの挑戦だ。『原発なくそう』の声を今こそ大きくしよう」とあいさつした。弁護団を代表して、椛島敏雅弁護士が、7月21日の参院選結果に触れて、「反原発勢力が東京選挙区5議席で、2議席を占めた意味は大きい。この原発訴訟、風船プロジェクトをはじめとする各地の原発ゼロ、原発即時廃止を求める運動が日々大きくなっていることが実を結んだ」と述べ、「風船プロジェクトは、放射性物質がどこまで飛散するかわかりやすく知ってもらう活動だ。一昨年、岐阜の法律事務所の取り組みで始まった風船プロジェクトが広がっている。もっともっと大きくなると思う。私たちが取り組んでいる運動に確信を持って、暑い日に汗をかいた人は報われると宮沢賢治も言っていますので、暑い夏に汗をかいて、私たちの思いを全国に伝えましょう」と訴えた。
川内原発訴訟原告・弁護団から、弁護団事務局長の白鳥務弁護士らが参加し、「川内、玄海で同時に風船プロジェクトを実施し、原発問題が注目され、関心が寄せられると期待している。川内原発訴訟は、原告1,958人。2,000人まであと一歩。ぜひ川内原発訴訟の原告になってほしい」と呼びかけた。
玄海原発訴訟でも、8月9日に第7陣の追加提訴を予定している。現在原告数は6,097人で、原告数1万人を目指し、原告を募集している。
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