<活用されていない防災マップ>
地震や津波をはじめとする災害時に、住民が安全に避難できるよう、各市町村は防災マップを作成している。防災マップは各市町村の役所の広報課などの窓口に置いてあるケースが多い。最近は市町村のホームページからダウンロードすることもできることも多い。子どもの命を預かる学校には、通学エリアをカバーする防災マップが配備されている。しかし、実際に活用されている学校は少ない。
防災マップには、一時集合場所や避難場所、臨時救護所などが示されている。通常は学校などがこれらの施設に指定されている。あわせて地盤の揺れやすさ、液状化などの危険性、危険箇所などの情報が盛り込まれているので、子どもたちの自宅から学校までの通学ルートの危険度(災害時の安全なルート)を把握することにも役立つ。
災害時はすべて徒歩での移動が想定されるので、崖や建物の倒壊箇所などがあれば通らないようにし、火災や液状化に警戒し、道路の幅と両側の状況を確認しつつ、最低2ルートは事前に決めておかなければならない。それにあわせて日頃から、実際に決めたルートを歩かせ、倒壊の危険性などのあるところを把握する訓練を実施しておくべきである。
災害時には、風景が激変している可能性も考え、幹線道路、線路、川などの位置関係を覚え、移動時は風下をなるべく避けることも徹底する必要がある。
子どもたちに防災マップをもとに自分の「通学ルート危険地図」を演習などで作成させてみることも、子供自身が危険度を意識する上で有益な手法の1つとなるだろう。
また、自分たちの暮らす地域の地名に(池・谷・沼・川・潟)などが付いた地盤の弱い危険箇所で起きた過去の災害事例を調べさせるような学習の時間をつくることも、災害に対する子どもたちの意識や興味を高めることに繋がる。
公立学校であれば、通学エリアは徒歩圏内がほとんどだが、私立学校の場合は、遠方から電車などの公共交通機関を利用して通学している子どもたちも多い。その場合は、災害時に帰宅できず、学校で数日間過ごすことも想定しておく必要があり、食糧・水・毛布などの備蓄は当然として準備しておかなければならない。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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