東日本大震災、2011年7月からタイ・バンコク郊外で起こった大洪水で、災害時にスムーズに事業を継続するための計画として注目されたBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)。一般的には、企業の防災対策、緊急時に対処するための計画として認識されていることが多いが、それだけでなく、財務面での事業分析・改善、後継者を育て、スムーズに継承する事業継承計画など企業の体質を強くするための計画でもある。特に中小企業において、経営のビジョンを再確認し、企業を活性化させるために策定する意義が高まっている。
<防災対策として注目集まる>
東日本大震災では、被災した中小企業の多くが、設備、人材などを失い、廃業や事業縮小に追い込まれた。タイ・バンコク郊外の大洪水では、大手企業でさえ、部品をすぐに調達できず生産停止に陥り、大きなダメージを受けた。
災害などが起こった際に、企業、組織として被害を最小限に食い止め、事業を続けるために、緊急時への対応力強化が求められている。中小企業庁など行政も、企業のBCP策定を積極的に推進し、中小企業支援に動き出している。
BCP策定の重要性を広めるために設立された日本BCP協会では7月29日、東京豊島区で会計事務所、税理士向けのセミナーを開いた。講師を務めた経営革新の支援機関、エフピーステージの五島聡代表は「タイの大洪水では仕入先の複数化など、きちんとした計画を立てていれば、大打撃には至らなかった。たとえば、火災を起こして事業継続が危ぶまれるケースなどでは、"何を守るべきか"をあらかじめ決めておくことは重要」と語る。
BCPを策定しているか、いないかで、緊急時の対応に差が生じ、企業の運命を左右する場合もある。東日本大震災では、事業を継続できた会社とそうでない会社は、どこが違ったのか。「手元流動資金を多く確保していた会社は、キャッシュがすぐに入ってこない中でも事業を継続できた」と、売り上げが立つまでの間に、資金を用意しておいたかどうかが分岐点となった。
<企業の財務経営力強化にも効果>
緊急時への対応力を強化するということは、平常時の競争力を高めることにもつながる。BCPを策定する目的は、防災対策だけでなく、中小企業の事業継続の阻害要因となっている「資金不足」「後継者不足」を解消することでもある。
五島氏は、「BCPを策定するには、財務分析から入るのがやりやすい。税務、財務から中小企業を元気にすることで、その企業の継続的な価値を高めることになる」と説明する。BCPと言えば、まだ多くの人が、災害が起こった時にどのように対処し、どう事業を継続するかを決めておく計画という認識をしている人が多いだろうが、会社を財務面から分析し、改善し、「強くする」計画でもある。
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