証券会社や信託銀行などの金融機関は、取引一任勘定取引による有価証券の売買、またはデリバティブ取引を行なうことは禁止されている。
しかし「ラップ口座」はその例外として、個人が証券会社や信託銀行などにお金を預けて運用・管理を一任する仕組みの商品である。
この制度が始まった2004年当初は、預け入れ最低額が数千万~数億円という富裕層に販売。株式市況が好転したこともあり順調な滑り出しであった。しかし08年9月15日のリーマンショックを境に株式相場は低迷。リスクの少ない商品として売り出した「ラップ口座」ではあったが、ロットが大きいだけに、顧客は大きな損失を出し解約が相次いだ。
そこで業界は「ラップ口座」の預け入れ最低額を数百万円まで引き下げた結果、最近のアベノミクス相場により新たな顧客を獲得。残高が1兆円を超えるまでに回復してきている。
取り扱う金融機関にとって、「ラップ口座」は長期にわたる投資のため、年間2~3%の手数料が安定的に入るメリットがある。12年末、日本の個人金融資産は1,547兆円で、そのうち預貯金が854兆円(55.2%)、有価証券は197兆円(12.7%)となっており、大きく水をあけられている。
そのため業界は、投資の初心者や上場企業を中心に採用が広がっている確定拠出年金を新たなターゲットとして、「ラップ口座」を主力商品に育てようと躍起になっている。
しかしラップという親しみやすい言葉の響きとは裏腹に、「ラップ口座」は債券・現金と株式投資の割合を購入者自身が決めるリスク商品である。
株式相場が順調に推移している時は良いが、一旦下げに転じると含み益がある株式を売却して新たな株式に投資する負のスパイラルに陥り、結果的に大きな損失を生むことに変わりはない。
「ラップ口座」の購入を計画している団塊世代は、官民挙げての株式投資熱に浮かされることなく、虎の子の退職金を失わないためにも、判断と責任、つまり「自己責任原則」を肝に銘じて、投資することが求められている。
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