<家庭と学校の連携を図れ>
防災マップの配備が学校側の役目だとすれば、一方、子どもとの間で災害時の行動や連絡手段を事前に確認しておくことが保護者の責任となる。小学校就学前の子どもであれば、単独で行動することは少ない。保育園・幼稚園では基本的に、保護者の迎えが原則だ。ただし、あらかじめ迎えまでの身を寄せる施設と安否確認方法を決めておかなければならない。
小学生・中学生も学校にいる時間帯であれば同様だが、登下校途中などに災害に遭遇したときには、必ず保護者と落ち合う場所を決めて確認しておく必要があり、日頃から学校でも、家庭に対して指導を行なっていくべきだ。親子で災害時の対応を考えさせるうえで、授業参観では単に学科の授業だけではなく、災害時の知見や意識を高める「親子で学ぶ防災授業」などの実施も検討するべきである。
<子どもに対する防災教育を推進せよ>
東日本大震災では、岩手県釜石市の中学生が小学生の手を引いて、地震発生後、指定避難場所からさらに奧の安全地帯へ逃げた。釜石市では行政が中心となって、日頃から防災教育に力を入れていた結果、小中学生の99.8%が津波の犠牲にあわずに助かった。釜石市の事例は「釜石の奇跡」と言われ、改めて地域での防災教育の重要性を痛感させることとなった。
「釜石の奇跡」の教訓から、今年5月には、一般財団法人防災検定協会(平野啓子理事長)が設立され、小中学生を対象にしたジュニア防災検定「災害から生命(いのち)を守る学びテスト」がスタートした。NET-IBでも紹介(5月24日)されている。
ジュニア防災検定は、知識量や記憶力で合否を判断するのでなく、自分で考え判断し行動できる「防災力」を子どもたちに身につけさせることを目的とし、事前課題、検定テスト、事後課題の3つのステップで構成された検定となっている。7月1日から受検生を募集し、12月8日に第1回の検定が実施される予定だ。詳細は、一般財団法人防災検定協会のホームページ(URL:http://www.jbk.jp.net/)をご覧いただきたい。電話は03‐3556‐5055である。
すでに、神奈川県座間市は、子どもたちに対する防災教育として、ジュニア防災検定の実施を決定した。その他の自治体でも、ジュニア防災検定の実施を検討している。首都直下地震や南海トラフ巨大地震をはじめとして、様々な災害が起きることが予想されるなか、自治体が中心となって、子どもたちに対する防災教育を推進することは、地域防災力の強化にも繋がるに違いない。
≪ (前) |
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。
※記事へのご意見はこちら