<住民監査請求 陳述会で監査委員も指摘>
社会福祉法人福岡市保育協会 中央保育園の現在の移転予定地に反対する同保育園保護者が起こした住民監査請求で、福岡市監査委員は1日、請求人および関係職員(こども未来局)の陳述を聴取した。同請求は、市が同土地を取得した際の購入価格8億9,900万円が「相場より高い」などとして、同土地への保育園建設の中止と、移転に関する各支出の停止を市長に勧告するよう求めている。
監査委員による質問のなかで、保護者は、同土地の購入価格を決めるため2012年6月に行なわれた不動産鑑定に、同土地の取引事例がない点を指摘。監査委員は、こども未来局に対して「当然、出てくるものではないか?」と問い、同局職員は、「確認して報告する」と、その場での説明を行わなかった。監査委員は、(株)福住が(株)徳増興産から取得した取引が事例として出されていれば、その資料などを提出するように求めた。
しかし、市が同土地を購入した価格約8億9,900万円に、同土地の取引事例が参考とされていなかった可能性は高い。既報の通り、NET-IBの取材で、同土地は11年9月、福住が7億6,600万円で徳増興産から購入したことが判明。市への情報公開で得た、12年6月に提出された鑑定評価書には、「近隣地域及びその周辺における不動産取引の状況」との項目(画像赤線部分)が記載されているだけで、福住と徳増興産の取引についての記載は見当たらず、総額9億762万円(1m2あたり61万8,000円)の鑑定評価額が報告されている。
9カ月で1億3,000万円以上も同土地の値段をつり上げた鑑定評価において、参考にされてもいいはずの同土地の直近の取引が考慮されていなかった。この鑑定評価については、市が「土地所有者(福住)と土地売買について、概ね合意に至る」とした12年4月の約2カ月後に行なわれており、「購入価格を提示せず、なぜ、合意に至ったのか?」といった素朴な疑問も生じている。
不動産価格評定委員会の事務を担当する市財政局 財産有効活用部 財産管理課によると、同土地の評価を行なった不動産鑑定士の選定は、中央保育園移転事業の担当課であるこども未来局が行なったという。土地の選定および取引をめぐるさまざまな疑惑から、「土地ありき」が濃厚と言える同移転事業。市の移転予定地の購入価格についても「ありき」だったのではないだろうか。
▼関連リンク
・中央保育園移転問題(福岡市中央区今泉):保護者の会HP
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