7月28日未明から山口県と島根県を襲った豪雨は、今月30日から運用が始まる「特別警報」に相当するものだった。「特別警報」は、現在の警報よりも1ランク上の警報で、数十年に一度の気象現象が予想される場合に発表される。その運用が始まる前の先月28日、気象庁は「命を守る行動をとるように」と最大級の警戒を呼びかけた。
<山口県内、観測史上最大の雨量>
降り始めから24時間の雨量は、島根県津和野町で381ミリ、山口県萩市須佐でも351ミリと、観測史上最大を観測するなど、約半日で1カ月分を上回る雨が降った。
また山口市阿東徳佐で1時間あたり143ミリという、山口県内で観測史上最大、全国でも11番目の豪雨を観測した。
28日は、温暖湿潤な空気が日本の南側の太平洋にある高気圧の縁を沿うように大きく回りこみながら、西日本の日本海側に流れ込んでいたが、日本海には寒気をともなう低気圧が存在し、流れ込む空気の進路を阻んでいた。そのような状況のなか、上空1万mのチベット高気圧の縁を通った冷たい北風が吹き下ろし、山口県と島根県の県境付近で雨雲を次々と発達させ、この付近に猛烈な雨をもたらした。
この豪雨によって、山口県と島根県をあわせ、2人の死者と2人の行方不明が出ている。また家屋倒壊や浸水被害は広範囲におよび、甚大な被害となった。
交通網も寸断され、国道191号線(萩~益田間)は、萩市須佐地内の道路崩落にともなう通行止めのため、益田市へは中国自動車道(六日市町)や国道9号へう回路するしかない状況となっている。
またJR西日本は山陰本線(益田~長門市駅間)の運転を見合わせ、奈古~長門市駅間で代行輸送している。SL「やまぐち」号が走る山口線(新山口駅~津和野駅間)も山口市阿東徳佐の線路崩落により不通となっており、復旧まで数カ月間かかると見られている。そのため沿線の観光地「長門峡」、8月15日から開園予定の「徳佐のリンゴ狩り」や西の小京都「津和野」への影響が懸念されている。
<安倍首相、4日に被災地へ>
政府は豪雨被害を受けた現地に、西村康稔内閣府副大臣を派遣。西村氏の報告を受けた古屋圭司防災担当相が、31日、首相に会い、激甚災害指定の検討を要請した。
それを受けて、菅義偉官房長官は1日の記者会見で、この記録的な豪雨被害を激甚災害に指定し復旧を支援する考えを示し、「(今まで)激甚災害の指定には時間がかかっていたが、できるだけ速やかに地元の要望に応えるようにと指示した」と語り、被害額が確定していない段階でも速やかに激甚災害に指定できるよう運用改善を指示したことも明らかにした。
安倍晋三首相は4日にも被災地を訪れ、豪雨被害を受けた現場を視察することにしている。政府としても、総理の地元である山口県の復旧に全力で取り組む姿勢をアピールする。
※記事へのご意見はこちら