福岡市の中央保育園の新築移転問題をめぐって、園児の保護者らが8月2日、福岡市と保育園を運営する社会福祉法人福岡市保育協会を相手取って、移転予定地への移転禁止と建築禁止などを求める仮処分を福岡地裁に申し立てた。
申し立てたのは、同保育園に通う園児6人とその保護者5人の合計5家族11人。保護者5人は、中央保育園保護者会の役員。
申し立てによると、同保育園の移転は、安全性、風俗環境、日照という保育の具体的な内容のうち本質的な条件をみだりに悪化させ変更するものであり、保護者らが特定の保育所で保育を受ける法的地位を侵害するとしている。
保護者側代理人弁護士によると、保育所の利用者は「保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有する」(2009年11月、最高裁判決)とされており、それには「本質的な保育実施条件について、みだりに変更されないことに対する期待も含まれている」としている。
中央保育園保護者会の堀田剛会長(39)は、申し立て後の記者会見で、「子どもの命が第一でやってきたが、福岡市は私たちの意見をまったく聞き入れない。法的手段をとらざるを得ないのは残念だ。子どもの命を守るためには、できることはやる。現地建て替えに戻せば、なんら問題はない」と話した。同保育園の園児(3歳、男子)の母親は「保護者の声が(行政に)届かないものだと思った」と、仮処分申し立てにより裁判所の救済を求めるしかない切羽詰った気持ちを語った。
保護者らは、移転予定地の前面道路が狭隘で十分な歩道がなく、自動車・自転車の交通量が多く、「園児らの生命・身体に関わる重大な欠陥がある」と指摘。移転予定地はパチンコ店に隣接し、ラブホテル2カ所が半径50メートル圏内に近接し、「園児の健全な育成に障害を及ぼすことは明白だ」としている。日照については、移転先は7階建てビル、10階建てマンションに囲まれ、園児の利用するほとんどの時間帯で日照がなく、日照環境は劣悪」であり、児童福祉施設最低基準第4条の「保育の設備および運営」を実質的に低下させると指摘している。保護者らは、移転の再考を福岡市などに繰り返し陳情してきたが、福岡市などはかえりみることなく移転予定地で建設工事に着手した。
福岡市子ども未来局の吉村展子局長は「事業者である社会福祉法人福岡市保育協会と協議しながら、しっかりと取り組んで行きたいと考えております」とのコメントを発表した。
▼関連リンク
・中央保育園移転問題(福岡市中央区今泉):保護者の会HP
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