これまでも、消費者目線に立った「エコで安心安全」な商品を開発、提供してきた生協。エネルギー分野でも、原発に頼らない、自然由来のエネルギーによる安心安全を選択した。エネルギーの理想とは何か。全国各地にあるネットワークを生かし、地域と協力し合ってエネルギーシフトを実践している生協の取り組みを取材した。
<太陽光発電は順調な伸び>
自然エネルギーへのシフトを実現するためには、率先して、大きな波動を作る存在が必要だ。全国にある生活協同組合(生協)では、エネルギー政策の転換を目指し、再生可能エネルギーの導入、推進に乗り出している。
生協が各施設で使用する電力の約20%を生み出せる100メガワット規模の設備容量の開発を目標に、まず手始めに太陽光発電に着手。大阪府和泉市の市民生協などが既存の施設の屋根にソーラーパネルを設置するなど、この動きは順調に全国各地に広がっている。今後、バイオマス発電、小水力発電など、地域に合った発電方法を模索し、普及・拡大を目指す。
再生可能エネルギーの導入と、口で言うのは簡単だが、実践するのは難しい。しかし、まさに「成せば成る」なのか。生活協同組合による太陽光発電の導入は、順調なスピードで広がっている。福島第一原発事故後、生協では、組合員からの「原発に頼らず、再生可能エネルギーの割合を高めたい」という声の高まりを受け、2012年1月に組織として、再生可能エネルギーを普及拡大していく方針を固めた。13年に入って本格的に導入を開始。全国各地で生協の物流センター、店舗などの屋根に乗った太陽光発電システムが、続々と稼働し始めている。
生協の全国連合会である日本生活協同組合連合会の組織推進本部、環境事業推進室の二村睦子室長は、「できることはすぐやろう!という気持ちで取り組んでいます。生協も電力を使っているので、その2割ぐらいは『自前で作っている』と言えるように、再生可能エネルギーの推進を始めました。15年までに50メガワットを目標にしています」と目標達成に向け、滑り出しは上々だ。
大阪府和泉市の市民生協では、冷凍センターの屋根の上に5,474枚のパネルを設置。総出力1.3メガワットになるシステムを12年9月に稼働した。コープこうべでは、物流センターなど6カ所に太陽光パネルを設置し、今年9月から稼働をスタートする予定。総出力は2メガワットに達し、総発電量は、一般的な家庭の約560軒分に相当する見込み。首都圏にあるコープネット事業連合では、千葉県印西市の冷凍センターの屋根に3,024枚のパネルを設置し、8月に運転を開始した。
ほかにも長野、茨城、北海道など全国的に太陽光発電を設置する計画が実行に移されている。これまでも組合員、消費者、市民の声を運営に取り入れてきた生協。原発事故後、原発の廃止を望むという組合員の声を受け、生協が培ってきた資源、ネットワークをフル活用し、再生可能エネルギーを自ら作り、普及させるチャレンジが本格始動した。
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