病から立ち直り、多くの人たちの支援を受けながら、人脈交流会「大志会」の活動に専念している源音吉氏。その参加者が毎回楽しみにしているのは、源氏が朗誦する致知出版社・藤尾秀昭社長の著書「小さな人生論」のリンカーンの一節だ。苦難苦闘のなかで、夢と志を捨てず、奴隷解放という偉業を成し遂げ、「民主主義の父」と呼ばれた男の一生を通じて、源氏は、現代を生きる我々にエールを贈る。
大病から立ち直ったとはいえ、源氏の健康状態は万全とは言えない。昨年末、意識不明となり、緊急入院。九死に一生を得る事態となった。源氏を救ったのは、恩師であり、友人である篠崎哲宗医師をはじめとする「大志会」の人々だった。「世の中に尽し、人に尽す。陰徳あれば陽報あり」(源氏の書より)。源氏はあらためて、たくさんの愛のなかに自分がいることを知る。源氏の体にはペースメーカーが埋め込まれたが、「世間様のお世話になるとは、恥ずかしい限りです。世のため人のためにもっと貢献したい」と、退院後、再び力強い一歩を踏み始めた。
どんなに体調が悪くとも、源氏は期待に応えて「リンカーン」の一節を朗誦する。自分の人生と人々に伝えたい想いを込めた、力強い一言一句、身振り手振りは、著者である藤尾社長からも絶賛された。貧困の少年時代を過ごし、事業に失敗し、恋人の死という悲運にも見舞われる。政治では何度も何度も落選を重ねた。それでも夢と志を捨てず、リンカーンはアメリカ合衆国第16代大統領となった。その奴隷解放という志の原点は、「差別はいけない」という母の教えである。国や時代は違えど、同じ教えを母から受けた源氏は、朗誦する一節に、夢と志、そして「報恩感謝の心」、とくに大きな愛で産み育ててくれた母親への感謝の気持ちが大切であるというメッセージを込める。
源氏の1日は、書で始まる。中小企業家同友会の入会とともに始めた書の一筆一筆は、力強くも感謝の念が表れている。「万象皆是師(すべてのものは師である)」「人は皆宝 桜梅桃李 それぞれ美しい」という自作の言葉もある。本記事のタイトル「未来は夢から生まれる」もその1つ。愛媛県宇和島市で大きな愛を持った母に育てられ、船乗りとして大海原のなかで情緒を育み、一時は小説家も志した。体1つで福岡に移り、飲食店経営で成功し、「西中洲のゲンさん」と親しまれる。中小企業家同友会では記録に残る勧誘実績を上げ、ライオンズクラブで熱心に社会貢献に尽し、表彰された。その1つ1つの歩みには、源氏の大きな夢があった。人生を切り拓くのは夢であること、それを実現させていくのは「報恩感謝の心」であること、現在の活動を通して、源氏は、自分の人生を通して学び得た『揺るぎようのない人生の真理』を伝えている。
今、源氏は、自分の教えの原点という月刊「致知」で学んだ平澤興氏の「人生は燃えて生きる」と、森信三氏の「人生は一生青春」という言葉を胸に、明るく前向きに歩いている。「一途一心、一念一行、一心不乱」(源氏の書より)で取り組んできた大志会は、今年9月で13周年。「大志会」や塾では、「人から、『ゲンさん、よくやるねえ』と言われますがね。私は、みなさまのような素晴らしい人を1人でも多く増やしたいと思って続けているだけです」と、源氏は語る。「人を育てる」という大きな夢が、源氏と「大志会」の未来を拓いている。
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長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。海上自衛隊、雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、働くお父さんたちの「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポート。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の風俗関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲に"ほぼ毎日"出没している。
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