7月5日、(株)トキワ設備の専務取締役、棚町兼成氏が暴行の容疑で、福岡区検察庁から福岡簡易裁判所に起訴(略式命令請求)された。取締役専務という権力のもと、執拗に繰り返された悪質な暴力事件だったようだ。このほど、棚町兼成専務から日常的に暴力を受けた被害者に会うことができた。彼が受けた暴力とは、いかなるものなのか。そして、管工事業界に投げられた波紋とは――。
<暴力を受け続けた毎日、社員は「100円ライター」>
今回A氏と、過去にトキワ設備に関係していたB氏に、話を聞くことができた。A氏は約1年間の在籍期間中に、兼成専務からどんな暴力を受けたのか。また、B氏から見た暴力行為の現実とは・・・。
2人に話を聞いた。(諸事情の為すべて仮名)
――暴行は日常的に行なわれていた?
B氏 兼成専務の暴力事件は、氷山の一角です。至るところで暴力行為は日常的に行なわれていました。A君だけでなく、多数の従業員が被害に遭っています。
A氏 日常的に暴力を受けていましたが、在籍中はお互いがクビになるのが怖くてみんな言えずじまいでした。退職してから、今回、私が受けた暴行現場の証言してくれる人が現れて立証することになりました。でも数多くあるうちの1件です・・・。
今思えば、入社したての新人だったことや、仕事の失敗などがあり、自分に非があると思っていました。また、せっかく就職したのに、職場を失うことの怖さもあったものです。
――トキワ設備の棚町社長は何も言わなかったのですか?
B氏 A君の場合については知らなかった可能性がありますが、他の人も暴行を受けていたはずですから知って見ぬふりだったのではないのでしょうか。
――暴行の状況はどんなのものなのでしょうか。
B氏 たとえば、現場で暴行を働いて引きずり倒し、「クビや、今から社長のところに行ってこい」となどと言うものや、眼鏡をかけていた社員は暴行を働かれるから割られる。割られたので新品の眼鏡を買ったものの、また暴行を受けて割られる。そのあと会ったときはコンタクトにしていました。『また割られるのでコンタクトにしました』というのは、一例です。まさに、人が見ていた暴力行為は氷山の一角ですよ。
――誰も何も言わなかったのですか?
A氏 社員といっても、所詮他人です。自分はほかの人が暴力を受けているとき、自分の身を守るのが先決です。口出しすると自分の身に降りかかってきますから、誰も何も言いません。兼成専務から暴力を受ける人間は、大抵、気が弱そうな人間ばかりです。反発する人間は社内の隅に追いやり、潰そうとします。誰も何も言えませんでした。
――そういった社風だったのでしょうか。
B氏 そうですね。だって専務が、『社員は100円ライターや』と豪語していたというのですから。要は、火がつかなくなったらポイとのことです。
A氏 最初は(暴力を受ける)怖さを超えて仕事ができない悔しさが湧き出ていました。でも何のために殴られるのか。かなり悩んでいました。仕事中もそんな気持ちが消えないのでさらに失敗につながったりして、ますます落ち込んでいきました。その理由なのか、私にはボーナスも出ませんでした。
――今はどんなお仕事を?
A氏 まったく分野は違いますが、地場の会社に就職できました。楽しく仕事をしています。
A氏が早良署に被害届けを提出してから、福岡区検察庁から「棚町兼成に係る暴行事件は7月5日、福岡簡易裁判所に起訴した」との知らせが入る。7月22日から、福岡市水道局から競争入札参加停止の措置が行なわれ、2カ月の指名停止となった。公共工事を主とする同社にとっては手痛い。
罰金刑に指名停止と、同社は社会的な制裁を受けた。だが、A氏に対して詫びの一言は、いまだにないらしい。対して警察と福岡市水道局には、平謝りだったという話は流れている。水道局管理者は「悲しい事件」とコメントし再発防止に努めるとしている。しかし、福岡市管工事協同組合の藤理事長は「話はできない」とコメントを避けた。トキワ設備といえば、事実上の無借金経営で財務面は固い。しかし、弱いものいじめで積み重ねられた財務となれば、それは虚構の会社と言えるのではないか。
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