<地域との連携がカギ握る>
バイオマス発電は、原料の調達をどのように行なうか。小水力発電は、発電に適した場所を探さなければならないなどの課題が残る。地域と合意・連携し、その地域の地形、特性を生かした取り組みが効率のいい発電の要諦となる。
北海道のコープさっぽろでは、大学などと協力して、店から出る生ゴミ、酪農のし尿などを集め、発酵させてメタンガスを取り出し、そこからエネルギーを生みだす実験を行なっている。東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏にまたがる生協・生活クラブは、秋田県にかほ市の市民と協力して組合員や市民らの出資で約5億円を集めて風車を建設。にかほ市の市民との間に、人的交流も生まれている。
「地域、地域でやれることがある。小水力やバイオマス、風力での発電は、農家や大学など地域の組織と連携し合い、地域振興とセットでやれることが大きい」と、生協・環境事業推進室の二村室長は語る。地域の資源、利点を活用し、市民の参加が成否のカギを握る。生協では、各地のJA、産直商品の取引先、生産者など、これまで作ってきたネットワークを生かした再生可能エネルギーの電源開発に挑む。
<小水力開発はブランクを埋める必要>
日本の小水力発電のポテンシャルは大きい。大規模の水力発電だと、ダム建設などの初期投資費用が大きく参入は難しいが、小規模の水力発電なら、地域にある用水路などを利用する形で参入しやすい。
ただ、人材、技術面で、小水力にはブランクがあるという。小水力発電の技術開発は、中国地方などで1950年から~70年頃まで盛んに行なわれていたが、70年代以降、電線が整備され、火力など大規模発電の技術が整うとともに技術開発は衰退した。
「小水力の設備は、昭和42年(1967)に更新されて、それ以来、新しいものは作られていない。今、これ以上のブランクを作ってはいけないと思う」と二村室長は語る。生協では、既存施設の範囲を超える太陽光以外でも、小水力、風力など各地域で発電プロジェクトへの参加などに取り組んでいく。
今、自然エネルギー開発の空白の時間を長くしてしまうと、次の世代につなぐことができなくなってしまう。エネルギーの自給率を上げる必要性が高まっている今こそ、持続可能な自然エネルギーを探すべき時なのではないか。
バイオマス発電では、捨てられるだけだった生ゴミや酪農のし尿、小水力では、今はただ流れているだけの農業用水などを発電に生かせるとなれば、まさにムダがなく効率的。1つひとつが生み出すエネルギーは大きくないかもしれないが、各地域が小規模の電源開発に乗り出せば、小規模の集まりが大きくなり、地域や国全体のエネルギー事情を変えることも可能だろう。
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