国と九州電力を相手取って玄海原発の1~4号機(佐賀県玄海町)すべての操業停止を求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」で8月9日、23都道府県の654人が佐賀地裁に追加提訴(第7次)し、原告総数が6,751人になった。7次提訴には、福島第一原発事故の被害者で、原状回復などを求めて福島地裁に提訴した「『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟の中島孝原告団長が原告に加わった。東島弁浩幸護団幹事長は「直接被害を受けた人と私たちがつながって原発廃炉へ協力している」と強調した。
板井優弁護団共同代表は、10月に福島第一原発の被害を現地調査し、被害者と原発訴訟の原告・支援者らが交流する計画を明らかにした。「被害をきちっと見て世論形成を盛り上げたい。全国、世界の世論をかき集め、原発推進勢力を追い込んでいく」と語った。
原告・弁護団は提訴にあたって声明を発表し、1万人原告を実現し、「国民世論の圧倒的な支持のもと、まずは国と九州電力に玄海原発全ての稼働差止、その先に廃炉を求め、全ての原発廃炉を実現させる」と決意を表明した。原発再稼働の動きに対し、「実効的な避難計画も策定されていない状況での原発再稼働は絶対許されない」と強調し、「重大事故・過酷事故となった場合の実効的な避難計画が策定されているか各自治体に公開質問を順次行っていく」としている。
長谷川照原告団長は、原発問題の論調が国際的な問題になってきたと述べ、IAEA(国際原子力機関)の事故対策の考え方として、(1)放射性物質の放出・漏えいを少なくする、(2)事故に備えてすべての想定に対策がとられ訓練が実施されていることを紹介。「安全神話を放棄したのだから、防災計画を完璧にするのが筋だ」と指摘した。
九州電力は、玄海原発3、4号機、川内原発1、2号機の再稼働へ向けて準備を進めている。
原告団長は同日、原告・弁護団の公開質問に対する佐賀県の回答について、「国任せ、市町村任せ、個人任せで何も決まっていない」と批判する見解を発表した。佐賀県に原発の再稼働反対の申し入れをするとともに、防災計画について放射性物質の拡散予測や避難手段の準備、緊急医療体制、ヨウ素剤の配布など準備状況を佐賀県に公開質問していた。佐賀県は、事故が起きた際の放射能拡散予測について「県において原子力災害時の放射性物質拡散予測はたてておりません」などと回答。長谷川団長は「防災計画を立てるのに、どのような事態が進展するかを事前にシミュレーションしておくことは、基本中の基本」と指摘。県が「放出量・放出継続時間やその時の風向き・風速など、様々な仮定をおいて予測を行うことになり、その制度や信頼性には限界があるため、国においてシミュレーションを実施された場合にも、あくまで目安として参考にすべきデータである」と回答したことに対し、長谷川団長は「事故を想定した予測は必要ないかのような暴論」と批判している。
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