「千鳥饅頭」、「チロリアン」など福岡を代表するお菓子を手がける"千鳥屋"。土産菓子屋として一時代を築いたが、親族たちは遺産相続のトラブルを抱え、それぞれの道に進んだ。時は流れ、世代交代により若返りが進むそれぞれの"千鳥屋"の問題を追った。
<商品は増加傾向 飯塚・千鳥屋本家>
福岡に残った兄弟のもう一人、5男の利一郎氏が飯塚市の千鳥屋本家。利一郎氏は、歴史愛好家としても知られ、本業の傍らで歴史に関する執筆活動も行なっている。
登記上の本社となる、飯塚市本町の店舗は長崎、佐賀時代から事業をおこなっていた時のものと思しき看板や、古い時計なども残っている。
店舗内には裏に、ツユ氏の旧宅とつながっている。この旧宅の一部は、ダックワーズなどの焼き菓子をつくる工場スペースになっているという。その他の飯塚市内に工場が複数あり、「千鳥饅頭」「チロリアン」などのお菓子はそこで製造されている。
利一郎氏の長男・実樹宜氏、次男・佳典氏が事業に携わっている。長男・実樹宜氏は販売を手掛ける(株)千鳥屋本家の代表を務める。次男・佳典氏は、菓子処「典」という店を、新天町、キャナルシティ博多に構えた。佳典氏の「パティシエになりたい」という夢で出来たとされる。この店で売られるのは、ケーキや焼き菓子、チョコレートなど。「典」のロゴには千鳥マークが用いられているが、店舗内には、「千鳥饅頭」「チロリアン」はない。
総本舗は、ベーカリーを外し、商品の絞り込みを行なっているが、飯塚の本家は逆で、商品が増える傾向にある。総本舗にはダックワーズやマカロンはなく、比較すれば総本舗より本家の方が菓子の種類が多い。本家店舗では、「典」の焼き菓子と同一のものが店頭に並ぶ。そのため、店内の印象として、総本舗は商品の絞り込みを行ないスッキリした印象だが、本家は、商品も多く、賑やかな印象を受けた。
<同じ商品名 別々の饅頭>
別れた親族それぞれが法人を持ち、同じ「千鳥屋」として事業を行なっている。販売の主力商品は、「千鳥饅頭」「チロリアン」を取り扱う。そんななかで、「各社で味が変わってきている」と関係者は指摘する。現在、総本舗も本家も、各社経営陣はツユ氏の子の世代から孫の世代へと移り変わってきている。各社それぞれに作る商品は、比べてみると差が出ている。
前述の関係者は、一部主力商品でも差が出てきていることを指摘していたが、明らかに違う商品もあった。本家、総本舗ともが販売する「千鳥饅頭」より小振りな饅頭「花千鳥」だ。
写真の皿上どちらも右側が本家の「花千鳥」。見た目は小さな千鳥饅頭で、かわは千鳥饅頭と同じかわを使用している。中身のあんは、黄身あんと小豆あんの2種類が存在する。
一方、皿上どちらも左側が総本舗の「花千鳥」。千鳥饅頭とは別物のしっとりとしたかわを使用し、明月堂の博多通りもんに近いイメージのお菓子だ。あんは白あんと黄身あんの2種類がある。
このように比べてみると、2社がそれぞれ手掛ける「花千鳥」は全く別物だ。大多数の消費者は会社が別々に2社存在することを知らない。そんななかで、同一名の商品にここまでの差が出ると消費者は困惑するだろう。
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