耐震偽装の「姉歯事件」が起きた2006年の際に、福岡市が構造強度の安全性を調査するとしたサムシング関与物件のうち、43件の調査を終わらせていないことがわかった。これに対し、当時サムシング代表で管理建築士だった仲盛昭二氏(1級建築士)が「殺人マンションなんてとんでもない。100%安全です。問題は、私ではなく、2年間も進捗しない福岡市、そのトップの高島宗一郎市長の責任こそ問われている」と語った。国交省九州地方整備局も「福岡市が自分で調査対象にあげたものであり、1日も早く完了するように、再三求めている」としている。仲盛氏は「8月1日の私への国交省聴聞会で、すべての物件の疑惑に終止符を打ってきました」と話す。福岡市は、耐震偽装と一方的に発表したまま、調査を完了しないのはなぜか。仲盛氏にインタビューした。
<調査済みすべてで「安全宣言」>
福岡市は、いつまで人権侵害を続けたら気が済むのですか。ここまでくると、行政によるいじめでしょう。
発端は、姉歯事件が社会問題になった翌年の06年2月、福岡市が一方的に、サムシングが関与した建築物3件に偽装があると発表したことです。その後、3件とも安全性になんら問題ないことが明らかになっています。その3件だけでなく、これまで福岡市をはじめ全国の自治体で調査が終わった建物はすべて「安全宣言」が出されています。
「第2の姉歯」と揶揄されましたが、姉歯事件とはまったく次元が違います。耐震強度にまったく問題はありませんでした。確かに、一部の構造計算書に不整合があったことは初めから認めています。入力データと出力データに不整合はありましたが、構造計算書の不整合自体は、07年の法改正前には一貫性は求められていず、違法ではありませんでした。当時は、設計途中で意匠設計などの変更があると、変更後のデータに基づいて再計算した出力データ部分を差し替えるのは、私だけでなく建築業界で普通に行なわれていました。これは一貫して主張していることです。
<最初から耐震性に問題ないとわかっていた>
福岡市が「偽装」と発表する前の06年2月7日、私は福岡市に呼ばれて事情聴取をされました。(社)日本建築構造技術者協会(JSCA)から市に「偽装があったと考えられる」という情報が寄せられた(2月3日)ということでした。私は、構造設計には絶対の自信を持っていましたから、私の考えを話しました。「疑問があれば、すべて根拠を示して説明しますから、何でも聞いてください」と話して、市の質問には全部答えて、説明すればわかってもらえると思っていました。その席で福岡市側から「お互いの見解をすり合わせてから発表します」と約束されていました。私も、また呼ばれれば何度でも説明する姿勢でした。ところが、福岡市は2月8日、何の前触れもなく一方的に「仲盛の構造設計に問題がある」と公表しました。これが発端です。
しかも、福岡市がのちに「安全宣言」を出したように耐震性になんら問題がないにもかかわらず、私から十分に話を聞かないまま、福岡市が一方的に発表した結果、サムシング関与物件は「第2の姉歯」扱いされ、福岡市は376件を安全確認の調査対象にリストアップしました。
全国の自治体でもリストアップしましたが、福岡市以外の自治体は調査がほぼ完了し、すべて安全宣言が出ています。福岡市も調査が終わった建物はすべて安全宣言を出しています。結局、全国でサムシング関与物件として588件をリストアップして、1件も耐震性に問題は見つかりませんでした。
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