東南アジアの新興国として、安定した経済成長を遂げるカンボジア王国。今年、日本との国交樹立60周年を迎え、4月4日に経済交流を目的とした西日本・カンボジア友好協会が設立された。親日派で知られるカンボジア王国の在日特命全権大使ハオ・モニラット氏に、カンボジアの現状と魅力を聞いた。
<過去の苦しい歴史から見事に立ち直った成功例>
――西日本・カンボジア友好協会設立、おめでとうございます。カンボジアのことをまだよく知らない日本人もいると思いますので、まずはどのような国なのか、ご紹介ください。
ハオ・モニラット大使(以下、ハオ大使) カンボジアは、インドシナ半島に位置する東南アジアの国です。複数の国と国境を接していて、西にはタイ、東にベトナム、北にラオスがあります。人口は約1,500万人と日本よりもずいぶん少ないですが、国民の平均年齢は22.9歳と若者が非常に多いです。首都はプノンペン。観光名所のアンコールワットは、一度は見たり聞いたりしたことがあるかもしれませんね。国民は皆、クメール語(カンボジア語)を話すことができ、国民の90%以上がクメール民族です。宗教は仏教ですが、日本と少し違って小乗仏教です。
――日本では、カンボジアと聞くと紛争や地雷などを思い浮かべる人も多いかと思います。政治や治安はいかがでしょうか。
ハオ大使 カンボジアは過去に紛争で苦しんだ経験がありますが、そこから見事に立ち直った成功例の1つと言えます。民主主義への過渡期でさえ平和的に経過してきましたし、今のカンボジアは歴史上最も平和な時代を送っていると言えるでしょう。国政では、今年の7月には5度目の国民議会の総選挙を迎えます。また地方では、これまで3度の選挙が行なわれました。いずれの選挙も平等かつ公正であると、国際的にも評価されました。
2012年、カンボジアはASEAN議長国に選ばれました。ASEAN加盟が最も遅かったにも関わらず、2度目の選出となり、これはカンボジアの成長の証と言えるでしょう。さらにPKO(国連平和維持活動)で中央アフリカ、チャド、レバノンなどへ地雷・不発弾処理部隊を送り、国際貢献を行なっています。このような国際貢献により、世界各国の見る目も徐々に変わってくるでしょう。今、カンボジアは被援助国から援助国(派遣国)へと変わりつつあります。
――大使は就任されて、4年目になるそうですね。
ハオ大使 実は4年前にカンボジアの外務省内で大きな人事異動がありました。その際、私には異動先として複数の選択肢がありました。オーストラリアとアメリカと日本の3つのなかから選ぶというものでした。アメリカはもちろん大国ですが、考え方や宗教が大きく異なります。オーストラリアはアジアにとっても影響力のある国ですが、それほどアメリカと変わらないと感じていました。最終的に日本を選んだのは、歴史や文化、活発な経済活動を見て決めました。日本の歴史的なイメージとしては、侍や忍者、あとは戦時中の軍隊のイメージぐらいしかありませんでした。
就任して、とくに日本人に関して感銘を受けたのは、東日本大震災後の出来事です。震災で水の供給が止まり、被災者たちは水を買い求めていました。順番に列をつくりルールを守って並び、売る側も値段を上げずに販売していました。その道徳的な行為に、心から敬意を表したいと思います。
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