イオンが「アジアシフト」を加速している。2014年上期にグループで大型商業施設開発を手がけるイオンモールがASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)初の大型ショッピングモールをカンボジアの首都プノンペンに開設する。今秋にはベトナムのホーチミン、14年春にはインドネシア・ジャカルタに進出する。ミャンマー、タイ、インド、ラオスなど事業展開に向けたファシビリティスタディ(事業化あるいは事業継続が可能か、実施意義や妥当性があるかどうかを多角的に調査・検討すること)を推進し、成長著しい東南アジアで、各国のさらなる発展と経済活性化に寄与することを目指す。
<ジャカルタに15年春進出>
インドネシアは人口2億4,000万人、12年の名目GDPは8,794億ドル(外務省調べ)とASEANの大国。名目GDPの成長率10年、11年と2ケタ成長を遂げ、12年はその反動で3.8%に低下したが、高い人口増加率と相まって、BRICSに次ぐ新興国に位置付けられている。首都ジャカルタの人口は1,000万人に近い。
イオンモールは同国の財閥シネルマスグループ傘下の不動産会社シネルマスランドと合弁会社を設立し15年1月、ジャカルタ郊外のバンテン州に1号店を開く。施設の名称は「イオンモールBSD」(仮称)。合弁会社はイオン(イオンモール)側が67%、シナルマスランドが33%出資する。約10万m2の敷地に延床面積12万5,000m2の建物を建設。総合スーパー(GMS)の「イオン」を核店舗に約190のテナントで構成する。
BSDは、車で10分以内の圏内で人口約5万3,000人、1万3,000所帯が居住。30分圏内だと130万8,000人、3万2,800所帯が住む。ジャカルタまでは車で約1時間。地区内には大学が3校あり、さらに校舎を増設中。比較的裕福な層が住むことで知られ、人気の高いエリアだ。ビジネス街としても開発が進められており、シナルマスランドはマーケティングオフィスを置く。
イオンモールは、飲食を強化する計画。日本のデパ地下のような食品物販ゾーンを設けるのをはじめ、インドネシア料理は揚げ物が多く、中間層ではヘルシーでないとして敬遠する傾向が強まっているのに対応し、近年需要の増えている日本食を含めた健康重視の食材を取りそろえる。
大型テナントの出店はほぼメドがついたことから、中小区画のリーシングに移行している。施設周辺ではショットプロットも続々開業中で、インドネシアでは最も注目されているエリアの1つと言われる。
<ジャカルタ郊外に2、3号店>
シナルマスランドとは15年以降、ジャカルタの東にある西ジャワ州ブカシ県デルタマス市に敷地面積20万m2、延床面積12万5,000m2の2号店「イオンモール デルタマス」(仮称)を建設することでも合意済み。1号店と同様、イオンのGMSが核店舗として入る。
イオンモール デルタマスはジャカルタとバンドンを結ぶ有料高速道路沿いにあり、周辺8km圏内だけで70万人の人口がいる(10年統計)。車で30分圏内だと72万人、18万所帯。一帯は大規模な開発が進められ、ビジネス地区や教育研究機関、住宅地が整備中。
さらに、ジャカルタ郊外の国際空港に近いカリデリス地区でも出店する計画。
インドネシアはASEANのなかでは外資の出店規制が厳しい。ただ、経済規模は最大で今後も高い成長が見込まれる。イオンはミニストップが地元小売業と提携しコンビニの展開を始めるなど、グループ挙げて取り組みを強化している。今後の規制緩和をにらみ、20年までにモールで20店体制を目指している。同年にはASEAN全体で50店に持っていく計画で、このうち4割をインドネシアが占めることになる。
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