<平和がもたらした著しい経済成長>
――協会は、活発なビジネス交流を目的に設立されます。カンボジア経済は成長著しいとは聞きますが、近年の経済発展について、教えていただけますか。
ハオ・モニラット大使(以下、ハオ大使) カンボジア経済は2004年から08年まで、2ケタ成長が続きました。08年のリーマン・ショックによる世界経済危機により、09年はわずかに経済成長が落ち込みましたが、その後急速に回復し、2015年まで7%程度の成長が見込めると予想されています。国民1人当たりのGDPは1,000ドルを上回り、最貧国を抜け出すのはもう目前です。
――それだけの成長を支える産業には、どのようなものがありますか。
ハオ大使 まずは製造業です。カンボジアでは11年に700だった工場の数は、12年には900を超えました。このうち、約300が衣類・縫製関連の工場で、約40万人が雇用されています。そのうち、女性が91%を占めます。女性の労働力を活用できている点では、縫製工場に大きな魅力があります。12年の衣類輸出額は50億ドルに上り、これはGDPの約40%を占めています。この数字の通り、縫製産業は我が国での成長産業と言えます。
そして、この成長は平和と治安の良化がもたらした結果にほかなりません。加えて、社会の安定が旅行者に安心を与え、観光客は毎年およそ20%ずつ増加しています。昨年、カンボジアを訪れた外国人は約18万の日本人を含め、およそ350万人。実は、日本からはまだそれほど多くはないのです。今後、日本の大都市とカンボジアを結ぶ直行便ができることを強く望んでいます。もっとたくさんの日本人に、カンボジアを訪れてほしいと思います。今年、外国人観光客は400万人に達すると見られ、観光業も主要産業の1つであります。
そのほかにも、石油などの地下資源も豊富に存在し、鉱工業も盛んになってきています。
――カンボジアの若さと勢いを感じますね。可能性を信じて、世界各国から投資が集まってくるでしょう。もちろん、日本からの投資も多いのではないのですか。
ハオ大使 日本からの投資は1994年から09年までの15年間で合計1億4,700万ドルだったのに対し、12年の1年間だけで投資額は3億ドルに跳ね上がりました。また、カンボジア国内で活動していただいているカンボジア日本人商工会(JBAC)の団体数は、10年の50団体から現在は100団体を超えました。カンボジアに大きな期待を寄せ、ビジネスチャンスを感じている日本企業が増えているということでしょう。
カンボジア進出の魅力を挙げれば、政治の安定、カンボジア国民が親日的であること、安い人件費、さらには農業や地下資源開発の将来性などがあります。近隣諸国と比べても、これだけ条件の良い進出先は見当たらないでしょう。そのことに気付き始めた日本企業は、少しずつカンボジアでのビジネスチャンスに確信を持ち始めたのだと考えています。
――急激な変化ですね。日本企業の関心の高さがわかります。では、今後の展開をどのように考えていますか。
ハオ大使 カンボジアはASEANの開発途上国として、貿易に関して優遇されており、たとえばEUへ輸出を行なう際には、ほとんどの産品において関税がありません。もちろん武器以外のすべてのものという条件ですが...。また、ASEANは中国やインド、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国とFTA(自由貿易協定)を結んでいて、投資家も利益を得やすい状況になっています。さらに、ASEANが提唱したこの6カ国との東アジア地域包括的経済連携(RCEP)については、15年末までに交渉が完了するように取り組んでいます。
多くの製造業者は人件費の安さに目を付け、他国からカンボジアへ生産拠点を移そうと考えています。しかしながら、日本からの投資は製造業の進出先だけを目的としているわけではありません。たとえば、2億ドル規模で14年に開業を予定しているイオンは、カンボジア国内を消費市場としてとらえ、とくに購買力が上がってきた中間所得層をターゲットにしています。
※記事へのご意見はこちら