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イオンモール、プノンペン店開業~ASEAN展開がスタート(後)
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2013年8月15日 07:00

 イオンが「アジアシフト」を加速している。2014年上期にグループで大型商業施設開発を手がけるイオンモールがASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)初の大型ショッピングモールをカンボジアの首都プノンペンに開設する。今秋にはベトナムのホーチミン、14年春にはインドネシア・ジャカルタに進出する。ミャンマー、タイ、インド、ラオスなど事業展開に向けたファシビリティスタディ(事業化あるいは事業継続が可能か、実施意義や妥当性があるかどうかを多角的に調査・検討すること)を推進し、成長著しい東南アジアで、各国のさらなる発展と経済活性化に寄与することを目指す。

<アジアシフト加速>
 イオンのアジアシフトが加速している。イオンは国内の大手流通業では最も早く海外進出した企業の1社で、84年設立したイオンマレーシア(本社クアラルンプール)は株式市場に上場、前期の売上高844億円と同国3位の大手に成長した。
 アジアシフトに拍車をかけ始めたのは、国内市場が少子高齢化で成長率低下が避けられないため。これに対し、「今後20年間、ASEANと中国を含めたアジアが世界で最も成長する地域になる」(岡田元也イオン社長)。前期のイオンの売上高は国内GMSが1.9%の伸び率にとどまったのに対し、アセアン事業は18.6%、中国は尖閣諸島問題による反日暴動にもかかわらず10.0%増とそれぞれ2ケタの成長率を達成した。

map_s.jpg 昨年10月にはフランス・カルフールからマレーシア法人を買収した(その後、社名を「イオンビッグマレーシア」に変更)。カルフールからは低価格業態の「ハイパーマーケット」26店全店を受け継ぐ。イオンがASEANでM&Aを手がけたのはこれが初めて。イオンマレーシアとカルフール子会社と合わせた売上高は約1,220億円で、外資では英国テスコを抜き2位に進出、首位の現地資本「GCHリテイル」に肉薄する。

 昨年11月には東南アジアの店舗を統括する「アセアン本社」をマレーシアに設立した。海外の地域統括会社は中国に続き2社目で、現地に権限を委譲し意思決定を迅速化、「日本」「中国」「アセアン」の世界3極体制を確立する。

<マレーシアは首位に肉薄>
 イオンのASEAN地域における店舗展開は、マレーシア、タイに今期からカンボジア、ベトナム、来期からはインドネシアが加わり5カ国に広がる。
 13年2月期末のASEANでの店舗数は、旧カルフールの加わったマレーシアが50店、タイが58店。業態別ではGMSが26店、食品スーパー(SM)58店、HP22店の計115店。イオンマレーシアは主にGMSと一部SM、旧カルフールを継承したイオンビッグマレーシアがHP、イオンタイランドはSMを展開する。
 イオンマレーシアは前期、GMS2店とSM1店を出店。イオンタイランドはバンコク首都圏中心に「マックスバリュ」と小型SM「マックスバリュ・タンジャイ」を展開。前期はそれぞれ4店、25店の計29店を出店し、店舗拡大を加速している。

 今期からはこれらにイオンモールの大型商業施設とインドネシアでスタートするコンビニが加わり、主要な業態がほぼ出そろう。
 今期のグループの設備投資(小売事業)はショッピングモールの開業が相次ぐこともあって240億円と前期の89億円から2.7倍に増やす。中国事業が微増の70億円なのに比べASEANへの力の入れようがわかる。イオンはASEANで小売事業と連動し金融・サービス事業を手がけており、これらを合わせると、今期は450億円を投資する。来期以降、ベトナム、インドネシアと新店が続くため小売り事業関連の設備投資はさらに増える見通しだ。

<経営の現地化も>
 事業の拡大に対応し経営の現地化も進める。小売事業は地域密着型産業で、製造業以上に地域のニーズに精通した現地の人材を経営幹部に育成することが重要だからだ。
 「経営現地化」の象徴が11年5月、イオンマレーシアの社長に就任したメリー・チュー氏(53)。それまでトップは日本から送り込んでいたが、初めて現地生まれ、それも女性で生え抜きの同氏が就任した。同氏は日本の東大に当たる国立マラヤ大学卒のエリートだが、現場から叩き上げ、徹底した現場主義で業績を上げたことが評価された。マレーシア人従業員の士気が上がったことは言うまでもない。「頑張れば私たちも社長になれる」と。

<モール、20年に50店体制>
 イオンは2020年には、現在営業利益に占める海外部門の比率9%を50%に高める長期ビジョンを描く。グループで大型商業施設を担うイオンモールはこの段階で中国100店、ASEAN 50店体制に持っていく計画。店舗のないタイや民主化の進み始めたミャンマーへの進出も視野に入れる。
 とはいえ、世界の成長センターであるASEANは、米国ウォルマート・ストアーズや英テスコをはじめ世界中の流通大手が狙っておりグローバルな競争になる。競争に勝ち抜くには、人材を育成し地域に根差した会社になることが欠かせない。

(了)
【工藤 勝広】

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