2011年のタイの大洪水や尖閣問題に端を発した中国の反日暴動を機に、少しずつカンボジアに目が向き始め、来年6月オープン予定のイオン・カンボジア出店などにより、大企業に限らず中小や個人企業にまでカンボジアへの関心が高まってきている。現にイオンでは、ASEAN諸国、カンボジア国内、そして日本から約160店舗の入居を求めており、そのうち40店舗は日本から誘致するとのことである。すでに私の斡旋により入居が決まった店舗も多く、現在、会社の設立、人材募集、内装工事の準備などに追われている。同時に、イオン出店を契機にカンボジア国内での多店舗展開を模索中の会社も多く、今後、日本の文化がカンボジア人にとって、さらに身近なものになって来るに違いない。
カンボジアの低賃金は、日本に限らず他の国も同様に注目し、先だって進出してきたが、他国の企業はカンボジア人ワーカーへの待遇やカンボジア経済の発展などという視点はなく、自国の利益のみを追求し、ワーカーを牛馬の如くに働かせ、皆勤手当、通勤手当、残業手当などを一切無視した。そのため今年2月、ベトナム国境近郊のバベット地区の経済特区で2万人規模の大ストライキが発生し、その結果、今年5月より最低賃金が61ドルから80ドルに引き上げられた。しかし日本企業は、当初より各種手当の供与、寮や食堂の無償提供などワーカーの立場に立った労務を行なってきたので、他国ほどの影響はなく、日本企業への信頼度が高まっている。
今回の最低賃金アップについて、カンボジア全土の経済特区(SEZ)を管轄するCDC(カンボジア開発評議会:会長フンセン首相)のチェア・ブティ副事務総長に話をうかがうと、「日本のように、カンボジアのことを考えてくれる国は少ない。そういう意味で、今回のことでは日本企業は被害者とも言える。今後、このようなことがないように、各国企業に指導する」とのことだった。
このように、日本企業に対する期待が大きくなるなか、現実に進出企業も増えて来ている。2010年に50社だった日本人商工会の会員数も、12年には104社と倍増している。
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