外交などの交渉ごとだけでなく、企業リーダーの育成法としても、ディベートの注目度は上がっている。日本は、欧米に比べ、議論する力が弱いと言われるが、このディベートに真剣に取り組む中高生たちがいる。12日、ディベートの日本一を決める第18回全国中学・高校ディベート選手権「ディベート甲子園」が東京・文京区の東洋大学で行なわれた。
高校の部では、「日本は、首相公選制を導入すべきである是か非か」をテーマに論戦が繰り広げられ、岡山県の岡山白稜高校が優勝した。
<知、議論の甲子園>
阪神甲子園球場では、高校球児たちが熱戦を繰り広げている。高校野球で活躍した注目選手らはプロ野球に進み、しのぎを削る。高校野球は野球界の発展に貢献してきたが、"知の甲子園"とも呼ばれるディベート甲子園は、どうなのか――。
10日から12日の日程でディベートの高校・中学の全国大会が東洋大学で開催された。12日、岡山白稜高校、愛知県の東海高校の間で行なわれた決勝では、今の日本にとっても熟議されていいテーマ「首相公選制は是か非か」という議題をめぐって、白熱の論戦が展開された。
6人のチーム制で戦うディベート選手権では、肯定側の立論(高校の部、6分)、否定側からの質疑(3分)、否定側の立論(6分)、肯定側からの質疑(3分)、否定側の反論する機会である第1反駁(4分)、肯定側の第1反駁(4分)、否定側第2反駁(4分)、肯定側第2反駁(4分)という過程を踏み、ジャッジによる議論の質の判定で勝敗が決定する。
なお、肯定の立場に立つか、否定の立場に立つかは、ルールに従って決定される。野球で言えば、先攻、後攻を抽選で決定するようなものだろう。各チームが、肯定側、否定側の両方に立った場合の論戦の準備をしなければならない。
<あらゆる論点を想定して準備>
高校の部決勝で肯定側に立った岡山白稜高は、「首相が国民に選ばれ、長期政権が実現すれば、経済が活性化し、外交交渉面でも結果を出しやすい」という立場で資料の引用などを行ないながら議論を進めていった。一方、否定側に立った東海高は、大統領が直接選挙で選ばれるアメリカでの実例などを挙げながら反論。質疑の部分は、さながら国会で繰り広げられる論戦のようだった。相手の出方や、相手の論をその場で受け、短い時間で分析し、反論する。トーク力だけでなく、瞬間、瞬間に相手の出方を読み、論を組み立て、どう反論するかを選択する判断力も求められる。
議題が決まってからの準備期間を含め、チームの6人が多くの資料を読みこなし、それを実戦に生かす。仮に、どこかの部分でミスがあっても、カバーし合うチームプレイの要素も濃い。これらは論理的思考や分析能力、社会に出た時に求められる交渉力を養うのに役立つ。
優勝した岡山白稜高校顧問の後藤文昭教諭は「決勝の壇上に立つために生徒たちが本気で取り組んできた。リサーチにリサーチを重ね、議論の場に上る可能性のある論点については、あらゆる状況に対応できるようにした。本気になれば、夢を実現できるということを生徒たちが教えてくれた」と、試合の場での説得力だけでなく、あらゆるケースを想定した研究と準備の徹底が勝因となったと語った。
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