かつて三井三池炭鉱を擁し、石炭というエネルギー資源によって近代日本の発展を支える重要拠点だった大牟田市。産業構造が転換するなかで、いかにして未来ある街づくりをしていくのか。大牟田市長の古賀道雄氏に、現状と課題、そしてこれからの政策について話を聞いた。
<3本の矢で活性化図る>
――中心市街地を中心とした、にぎわいづくりの現状と課題についてお聞かせください。
古賀道雄市長(以下、古賀) 大牟田市は、かつて三池炭鉱で国内最大級の石炭産出量を誇っていました。1997年に閉山となり、その影響は大きかったですね。現在も尾を引いていますが、山に囲まれたほかの産炭地域と違い、大牟田市は海に面した街です。もちろん石炭からスタートしたわけですが、三井化学、電気化学工業など東証一部上場企業の工場が今も元気に操業しています。石炭だけの街づくりではなかったのが幸いです。また三池港や九州新幹線、西鉄や有明海沿岸道路などインフラも整っているおかげで、急激な過疎化は免れました。
中心市街地活性化については、全国的に商店街の空き店舗や空き地が目立ち、空洞化している状況があります。とくに大牟田市は、中心市街地と呼ばれているところは100ヘクタールほどありますが、なかでも新栄町や銀座通商店街など41ヘクタールの空洞化が著しいのです。その要因の1つに、モータリゼーションに対応できなかった、近くに大型商業施設ができたといった理由で、2つの大きなデパートが撤退したことが挙げられます。
私は3期目ですが、1期目から中心市街地活性化を公約として掲げていました。アベノミクスではありませんが、私なりに活性化のための「3本の矢」を考えています。1つ目は、民間活力を活用した「街なか居住」です。41ヘクタール部分は、かつての一大商業地としての復活は難しい。そこで、中心市街地を"住んで集まる街"にしたいということです。そのために、高層マンションの建設を行政として支援していきます。
2つ目は、行政自らが公共施設をつくります。「市民活動等多目的交流施設」を現在建設中で、今年10月にオープンする予定です。NPOやボランティア団体などが集まる場が今までありませんでしたから、その場を提供するのが目的です。そこに子育て支援や青少年育成の機能も移転させ、市民が多目的に利用できる施設にします。
3つ目は、新栄町駅前の地権者自らが準備会をつくって進めている市街地再開発事業です。昨年、大牟田商工会議所が中心となって、地元の住民や事業者の皆さんとともに「中心市街地グランドデザイン」を策定しました。こうしたハード、ソフトの両面を合わせて、活性化を図っています。
市街地再開発事業を実現させるためには、「中心市街地活性化基本計画」をつくり、これを国に申請し補助制度を活用します。そのためには、都市計画決定をしなければなりません。再開発事業を進めるにあたっては、今の建物をすべて壊して高層化していくための計画を策定し、年度内に都市計画決定を行なうのが行政としての役割です。
――市街地再開発事業の予算は総額でどれほどでしょうか。
古賀 事業費としては64億円で、そのうち市と県が10億円ずつ予算を組み、残りは国が補助制度で負担します。事業者の選定については、準備会が進めることになります。
それとは別に、新大牟田駅は大牟田市の東の玄関として、活用方法もいろいろと考えております。中心地から6km近く離れていることもあり、不便だという声もあることは承知しています。今はあの一帯を農業振興地域から市街化区域に変更し、8.7ヘクタールの土地区画整理事業を行ない住宅が建てられるようにしました。まだ目標が達せられたとはいえませんが、10年、20年先を見据えています。
また、2次アクセスについては西鉄バスのほかタクシーがあり、今年4月からはレンタカーも開業しました。荒尾と福岡空港をつなぐバスの新大牟田駅への乗り入れも西鉄と調整中です。1日350円の駐車場も2カ所できました。
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<プロフィール>
古賀 道雄(こが・みちお)
1943年生まれ。66年3月早稲田大学第一政治経済学部政治学科卒業後、4月三井金属鉱業(株)入社。89年10月、同社三池事務所所長、91年5月、大牟田市議会議員初当選。2002年9月、三井金属鉱業退職。03年5月、大牟田市議会議員を勇退し、同年12月大牟田市長に就任。3選して現在に至る。
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