このところの記録的な猛暑のため、電力消費量はウナギ登りである。東日本大震災の影響を受け、我が国のエネルギー需要は逼迫した状況に追い込まれている。ほとんどの原子力発電所が運転停止を余儀なくされ、代替電源として火力発電所がフル稼働中である。そのため、燃料である天然ガスなどの輸入量が急増中。
2011年の時点でも、すでに日本の液化天然ガス（LNG）の年間輸入量は1969年にアラスカ産LNGを輸入し始めて以来初めてとなる1,000億m3を突破している。輸入総額も前年比約37％増の4.8兆円と過去最高を記録。12年には1,200億m3にまで膨らんでいる。この傾向は収まる兆しがない。
天然ガスはアメリカのシェールガス開発が急ピッチで進んでいるため、「今後の安定供給性には問題がない」と予測されてはいるが、価格は高騰ぎみである。というのも、国際エネルギー機関（IEA）の見通しにもあるように、「震災等の影響により、世界の天然ガス消費量が2035年までに50％以上増加する」ことが確実視されているためだ。
そうした厳しい情勢の下、我が国の周辺海域には相当量のメタンハイドレートが眠っていると推定されているため、その開発への期待がいやが上にも高まりつつある。安倍総理も日本政策投資銀行の幹部に対して「日本政府はメタンハイドレートの開発に命をかける。１兆円の資金投入を含め、あらゆる準備をしたい」と指示を出したという。アメリカ発の「シェールガス革命」を上回るエネルギー革命を実現したいとの強い意志が感じられる発言だ。まさに、資源小国が資源大国に変身できるチャンス到来といえよう。
言い換えれば、アベノミクスの「３本目の矢」に相応しいエネルギー革命の担い手を見出したというわけだ。日本のプラントメーカーやエンジニアリング会社も色めき立ち、新たな投資や海外企業の買収に積極的に動き出すなど、素早い反応を見せている。何しろ、天然ガスプラントは、日本メーカーが世界市場で圧倒的な強みを発揮している分野に他ならない。日本政府の政策的かつ資金的後押しがあれば、日本企業がメタンハイドレートの開発競争で世界をリードする可能性は極めて高い。
では、メタンハイドレートとは一体どのような資源なのか。メタンハイドレートとは「燃える氷」と呼ばれる冷たいシャーベット状の物質である。地中で死んだ動物や植物から出たメタンと水でできている。火に近づけると、大量のメタンが燃えて、水だけが残る。低温、高圧の下で天然ガスの燃料となるメタンガスと水が結合し固体化したものだ。シベリア、カナダ、アラスカなどの永久凍土層の下や深海の海底下などに存在し、日本近海では北海道から沖縄まで広範囲にわたって分布しているものとみられる。
この未来のエネルギー源に関する調査は日本が世界の最先端を走っており、2018年をメドとした実用化が目標とされている。我が国のメタンハイドレート調査、開発は世界に先駆け1990年代にスタートした。間違いなく、日本はフロントランナーである。
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＜プロフィール＞
浜田 和幸（はまだ かずゆき）
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年７月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年６月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
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