九州の行政機関が、台湾から制作チームを招聘し、九州の観光地をPRしようという番組が先日、福岡県、長崎県、熊本県で撮影された。その撮影現場を別の台湾メディア関係者が訪れたが、「撮影風景に愕然とした」とのこと。
ロケ隊は大型バスを貸し切り、女性タレント2人を含めた10人前後のクルー。大がかりな移動だ。撮影で、タレントは台本のセリフを丸暗記し、覚えたセリフをカメラの前で発しているだけ。台湾の敏腕プロデューサーを招いたようだが、ただ、スケジュールと台本にはめ込むような手法。「『任せておけばなんとかなる....』と制作者に丸投げ、野放しの姿勢が見受けられた」という。
視聴者は、露骨な広告や、無味乾燥なレポーターのセリフに飽きている。だからテレビ離れも進んでいるというご時世。今の時代、準備されたセリフをただ言っているような番組では視聴者の心に響きはしないだろう。ガイドブックや情報誌、事前のリサーチではわからないことが、現場に来ることで初めてわかる。「現場にいる」からこそわかる旅の醍醐味を、言葉を駆使して視聴者に伝えるのが「番組」の役割というのに。
「行政系の番組の撮影が、いかに『機械的に』行なわれているか、今回の撮影を見ることで手に取るようにわかった・・・」と現地メディア関係者。カメラマンとディレクターが風景を撮影している間、女性タレントは訪れた場所の雰囲気に浸るでもなく、ただ、セリフを忘れないように念じているだけ。つまり、番組は、事前にディレクターが書いた台本に沿ってのみ進められているのである。事前に用意されたものを、ただ、埋めていくだけの作業。敏腕プロデューサーの言葉を借りると、「『魂』がまったく感じられなかった」そうだ。
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