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福岡都市圏と渇水リスクを考える(1)
特別取材
2013年8月21日 10:34

<本来の安定供給のため、さらなる渇水リスク回避努力が必要>
 福岡市の水道水源別割合(2011年までの5年間平均値)は、自己水源であるダムが36.9%、近郊河川が26.6%、福岡地区水道企業団からの受水分が36.5%を占める。そのうち、ダムの貯水率が66.72%(8月20日時点)まで低下している。7月10日時点では95.88%とほぼ満水状態だったが、わずか40日間で約3割の水が失われたことになる。連日の少雨と猛暑に見舞われ、福岡都市圏の水がめは急速に干上がりつつあると言える。同市では1994年以来、給水制限は実施されていない。過去の渇水など忘れ果ててしまっている感のある昨今、福岡市の渇水リスク回避策は万全か?

 水道水が供給できなくなった場合、よそから水を融通してもらうことや、給水車が駆けつけることはあるが、あくまで暫定的、限定的な措置であって、その地域の水はその地域で確保するのが原則になる。従って、福岡市の水の確保は、基本的に同市の責任のもとすべてが展開される。

wt_2.jpg 福岡市は過去に2度大きな干ばつを経験している。一度目は1978年。5月20日から実施された給水制限は287日間に及んだ。二度目は1994年。8月4日から295日間の給水制限を強いられた。少雨、猛暑による干ばつが引き金になった点では共通している。必要な水を確保していたはずが、いくらダムを確保しても、雨が降らなければ、水はまたたく間に欠乏する。
 給水制限を教訓とし、2005年4月、福岡地区水道企業団の海水淡水化施設(施設能力5万m3/日)が生まれることになる。福岡市はここから1万6,400m3/日を受水している。

 海水淡水化施設は、降雨量に左右されず、一定量の造水が可能なのが大きな特徴。それだけに、ダムに頼るのではなく、海水淡水化施設で福岡市すべての水(43万4,000m3/日・23年度実績)を賄えば良いという考えも成り立つが、海水淡水化による造水には膨大なコストをともなう。オイルマネーで潤っているならともかく、福岡都市圏程度の財政力では、海水淡水化による全量供給は現実的ではない。

 水道水源の確保には、リスク分散の必要から電力と同じく、多系統供給、ベストミックスによる渇水リスクの回避が求められる。2011年4月、北九州市と福岡都市圏との間で水道水の相互融通が始まっている。これは多系統化による渇水リスク回避の新たな方策の一つと見ることができる。すべてとは言えないまでも、同市では、実現可能な水源確保の方策は講じていると言える。

 そんな同市の努力にも関わらず、今後とも雨に見放され続けて、渇水に陥った場合、給水は制限され水道水の供給はあえなく途絶えることになる。水道の断水がどのような影響を及ぼすか。市民生活は衣食住あらゆる面で不便になり、経済活動も営業時間の短縮などを強いられ低迷する。無論、公共工事も停滞する。同市水道局では1994年の渇水の際、給水制限を実施しているさなか、多くの配水管工事の発注を中止したという事例もある。配水管工事には大量の水を使う洗管作業を伴うからというのが理由だった。必要なインフラ工事が中断を余儀なくされた上、少なからずの管工事業者の仕事も失われた。平たく言えば、みんなが不幸になったのだ。

 同市は全国に先駆けて「節水型都市づくり」を標榜。水道水源の確保など必要なインフラ整備にいそしむ一方、市民の節水協力にも力を入れてきた。本来「水道の安定供給」とは、市民に節水を求めずとも、必要な水量を確保できる状態を指すと考えられる。福岡市の水道が本来の安定供給を実現するためには、さらなる渇水リスク回避の努力が必要だと考えられる。

(つづく)
【大石 恭正】


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