資源エネルギー庁は８月20日、再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表した。この調査は同庁が定点観測的に調べているもの。この調査によると、平成25年度に運転を開始した再生エネ発電設備は、太陽光（住宅）が27.9万kW、太陽光（非住宅用）が96.1万kW、風力が0.2万kW、バイオマスが3.8万kWとなっている。そのほか、小水力発電や地熱は今年度においては0.0万kWと発表された。

　この数字、平成25年度、すなわち今年の話しである。今年の、それも５月末までの数字がカウントされているのだ。年度の始まりは言うまでもなく４月。つまり今年４、５月の分で、これだけの再生可能エネルギー設備が稼働を開始した、ということなのだ。これは素晴らしい伸びと言える。
　同調査によると、平成24年度通年での稼働容量は以下の通り。太陽光（住宅）126.9万kW、太陽光（非住宅）70.6万kW、風力6.3万kW、バイオマス3.6万kW、中小水力（１MW以上）0.1万kW、中小水力（１MW未満）0.3万kW、地熱0.1万kW。
　見てわかるように、非住宅用の太陽光発電施設の今年２カ月間での稼働実績は、すでに昨年一年分を大幅に超えている。これは固定価格買取制度の導入によるメリットが認知され、利回りのいい投資先として人口（じんこう）に膾炙（かいしゃ）していったのだろうと思われる。来年度以降の買取価格は来年３月に公表されることになるだろうが、それによっては、この高いモチベーションは維持されうる可能性がある。少なくとも、今年中は早いペースで稼働していくこととなるだろう。

　再生可能エネルギーが普及すれば、再生エネ賦課金という名目で電気料金は上がる。それゆえ、消費者の視点に立てば再生エネの普及はありがたいとは言い切れない。しかし、その電気料金の値上がりこそが新たな再生エネ普及のモチベーションになり得る。消費者としては損だが、電力事業者としては利がある、という立場の逆転が生まれるのである。電気料金が上がるほどに払う側から売る側への転換が進んでいくことになるだろう。
　さて、こうなってくると、ずっと先の話になるかもしれないが、太陽光パネルなどを設置できる資金に余裕がある者は利をむさぼることができ、ないものはえんえんと搾取されていく、という構造が生まれてくることが考えられる。100人中99人が売電業者になったら、残った１人が99人分の利を払わなければならなくなる、という寸法だ。
　今はまだ再生エネの普及率がわずかであるから、そこまで際立った不便を感じることはないだろうが、この状態があと数年続いたとしたら、数十年続くとしたら、その差はより顕著になっていくだろう。そうなれば、消費する側は強制的にでも売電する側に転じていくことになるだろう。すると、電力の買い手がいなくなってしまう。さて、どうなるんだろう。という根本的な欠陥をはらんだ制度ではあるが、再生可能エネを普及させるには非常に有効な制度である。既存の枠組みでは欠陥制度だが、新しい制度が生まれればうまく機能することも十分考えられる。この再生可能エネの普及の勢いで日本の電力需給の仕組みに新たな風を吹き入れてほしいものである。

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